マッチングアプリ

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マッチングアプリ

スマホの通知音が鳴る。 私はすぐスマホを取りだし確認する。 「……ばーか」 誰にも聞こえない程の小さな声で呟くと、溜息をつきながらメッセージを返す。 メッセージありがとうございます! こんな素敵な人とマッチングできて嬉しいです。 たくさんお話が出来たら嬉しいです。 これからよろしくお願いしますね! ハートマークをつけて返信しようかと思ったが、ハートマークをつける価値もない奴だし、まだマッチングしたばかりだからやめておく。 今やり取りが始まった相手は、目の前にいる私の旦那だ。 そしてこのアプリは、今流行りのマッチングアプリ。 旦那は以前から、このマッチングアプリを使用しいろんな女性とマッチングして実際に会っているのだ。 もちろん、お茶するだけの関係では終わらない。 今も関係が続いている女性は、確認が取れているだけで2人。 一夜限りの相手はもっといる。 証拠も全て揃い、準備は整った。 だけど…… ただ証拠を突きつけるだけでは気が済まないので、こうして私もマッチングアプリを使用して旦那とやり取りをしている。 旦那は私とは気づかずに、ニヤニヤしながらメッセージのやり取りを続けている。 他の女性達と同じようにすぐ会おうと誘ってくる。 ここで渋るとすぐにフェードアウトされてしまうので、こちらも乗り気で会う約束を取り付ける。 「俺、今週の土曜日にサークルの友達と会うことになった」 「そうなんだ、お昼から会うの?」 「おぉ、昼から会うよ!夜もそのまま飲みに行くから!」 「そうなのね、分かった。たのしんでね」 サークルの友達ね…… マッチングした私と会う事になっているのに気づかないなんて、滑稽ね。 ーー土曜日 「じゃあ、行ってくるな!」 「うん、行ってらっしゃい」 朝からニヤニヤしながら着飾って、本当に気持ち悪い。 一緒の空気を吸うだけで気持ち悪いのに、この日までよく耐えたわ。 今日で終わらせる、さあ私もアイツとの待ち合わせ場所に向かおう。 「絶対に許さないんだから……!!!」 離婚届を握りしめて、私は今から戦いに行く。
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