1:佐藤栄子

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1:佐藤栄子

1 『佐藤栄子』  そう書かれている名札が貼られるレターボックスに栄子は手を伸ばした。仕事先に来たらまずそこで出勤表などを確認するのだ。仕事先といってもアルバイトだ。  栄子は大学に入り、アルバイトをすることにした。アルバイトとして塾講師を選んだ。なぜ塾講師かといわれたら、特に深い理由はない。  大学生のアルバイトといったら塾講師、そういわれるくらい普通のことだ。単価が高いからそう言われる。しかし、シフトや拘束時間を考えたらそこまで単価が高いわけでもないとは言われている。  栄子が行く職場は、最寄りの駅から2駅離れた駅の近くにあった。そこへは大学へ行く定期券でいつも行く。募集要項を見たら交通費支給と書かれていたが、実際に面接したら大学への定期券があるから交通費を支給しないと言われた。  その塾は駅から1分のところにあった。駅のホームから見える4回建てビルの3階にあった。2階は鍼灸院で、4階は空家だった。   「きゃー、佐藤先生のウェーブっていつ見ても、かーわーいーいー」  栄子と同時時期に入った同じく大学1回生の鈴木美衣はブリッコだった。この相手を褒める行動は自分の魅力を伝えるための踏み台だ。内心苛立ったが、合わせることにした。 「そんなことないです。鈴木先生のボブカットほうがかわいいですよ」 「えー、そんなことないよー」  そんなこと言いながら自分の可愛さアピールするダシに私を利用する。いわゆる引き立て役になる。男性からは好かれるが、女性からは好かれるタイプだ。 「木村先生もそう思いますよね?」 「そうですね。2人ともかわいいと思います」  木村椎菜は真面目で清楚な雰囲気の先輩で、困ったときにはいろいろとフォローしてくれる。黒髪ロングはそういう印象を与えるものであり、男性から人気があるらしい。それを見越してわざとそういう雰囲気を醸し出して男を漁る清楚ビッチというものがあるらしいが、そうではない本当に清楚な人もいるものである。  そんな栄子たちのことを、影で男性講師たちが言い合う。彼らは栄子たちに聞こえていないと思っているが、そういうものは確実に聞こえるものである。栄子は何回もそういう現場に居合わせて、陰に隠れて息を忍ばしていた。 「鈴木先生はかわいいなー」 「いや、木村先生もいいですよ。綺麗だ」 「たしかに美人さんだ。しかし、俺はかわいい系の方が好きだなぁ」 「お前、ロリコンか? 俺はやはり大人のお姉さんがいいなぁ」 「ロリコンじゃないさ。お前こそマザコンか」 「マザコンじゃない。めちゃくちゃマザコンや」  男どもはっ! そう栄子は心の中で悪態をついた。 栄子が思うに「木村先生も内心腹たっているだろ!」だが、もしかしたら「そういうことを気にしないかも」と清らかな心も否定できないわけでもなかった。「でも、木村先生も人間だし、怒ることも……でも、想像できない……うーん」と別の悩みが生まれる。 「にしても、鈴木先生は腹立つ」  栄子は陰口をたたいた。男性講師どもと同じように陰口を叩いた。誰かが影から見たら「女性どもはっ!」と思われただろう。  別の日。 「そういえば、鈴木先生と木村先生は彼氏いるのですか?」  あるとき、美衣は2人に尋ねた。栄子には自分がモテているアピールをするためのイヤミに聞こえた。ルンルン気分でスキップしてくる相手にツンツン気分をフリーズさせて社交辞令に笑顔で返した。 「いないです」 「私もいないです」  栄子に合わせて椎菜も笑顔だった。栄子の見立てでは、普通なら椎菜も自分と同じく嫌な思いをしているが、普通と違ってそう思っていないかもしれない。そこは推測するしかなかった。 「本当かなー?」  美衣は怪しんできた。普通に考えたら異性関係をはぐらかせるのはよくあることで、後になって「え? あの2人が!?」と驚くことはたまにあることだ。しかし、本当に異性関係で何もないことも多い。 「本当です」 「私も今はいません」 「昔にいたんですか!?」  栄子は椎菜が交際経験あることに驚き裏切られた気分だった。勝手に自分と同様に今まで交際経験がなかったのかと思った。しかし、冷静に考えて自分よがりな思考だと思った。 「そういう佐藤先生はー?」 「……18年いません」  栄子は顔を逸らしてフルフル震えながら赤面した。こういう話は苦手であり、いつも避けてきたり周りに笑われてきたのだ。周りは馬鹿にしてきたのではなく優しく笑ってくれたのは理解していたが、それでも苦痛の人生だった。 「ということはー今まで付き合ったことがないんだー」  美衣は本当に馬鹿にしてきているふうに見えた。それは栄子は美衣に対して苦手意識を持っているからそう見えるだけかもしれない。しかし、色眼鏡かもしれないが、ぶりっこに馬鹿にされている気分だった。 「そうです。悪いですか」 「悪くないですよー。ねー、木村先生」 「そうですよ。今はそういう子も多いらしいですよ」  そういう子も多い、か。栄子も含めたそういう子と違って自分は優位に立っていると言いたいのか、と思った。  が、よく考えたら、その発言を言ったのは美衣ではなく椎菜だったので、自分の心の醜さに自分で恥ずかしくなって咄嗟に頭を掻いた。それを見て周りが奇異な目で栄子を見た。  また後日。 「鈴木先生、木村先生、合コンどうですかー?」  美衣は提案してきた。自分が合コンをするための引き立て役に選んだのはわかりきっていた。いつもの職場での扱われ方だ。 「合コン行ったことないです」  栄子は正直に言った。断ることも見越しての発言だ。慣れていない人を連れて行きたくないだろうと、過去に断れた経験則から選んだことだだ。 「えー、珍しい! 今時合コンしたことないなんてー」 「そんなに珍しいですか?」  栄子は自分でも珍しいと思った。しかし、知らぬふりをした。 「珍しいよー。ねぇ、木村先生」 「まー、人それぞれだと思いますよ」  美衣に会話を振られた椎菜は当たり障りのないことを言う。それを言ったらオシマイだという意見だが、美衣を仲間外れにできたような気分で嬉しかった。ざまあみろ。 「ちなみに木村先生は合コンしたことはあるの?」  美衣は少し渋い顔をしていた。しかし、予想外の返事ではなかったらしく、いつもどおり寒気がする猫なで声でいた。私はサブイボが立った。 「何回か。でも、苦手で」 「いいじゃない。行きましょうよ。彼氏いないんでしょ?」 「そうですね。では、参加させて頂きます」 「さすが木村先生! それで佐藤先生はどう?」  椎菜は遠慮しながらも付き合いで承諾した感じだ。さすがに栄子も断るわけにはいかないと思った。でも、遠慮がち。 「でも、行ったことがないから、邪魔になるかも……」 「邪魔にならないわよ。それに合コン行ったことがないなら経験として行きましょうよー」 「経験ですか?」  経験、便利な言葉だ。断りにくくなる言葉で、誘い文句としてたまに使われる。栄子は気乗りしないままに背水に追い込まれた感覚だ。 「そうよ。何事も経験でしょ? 彼氏もいないんでしょ?」 「――わかりました。行きます」 「じゃあ、この3人でねー」  栄子は折れた。美衣は喜んだ。椎菜は頷いた。 美衣に誘われて3人で合コン。 場所は職場の隣町にある少しおしゃれな居酒屋。ビルの7階から小都会の街並みが小綺麗な夜景として見える。大学で都会を経由しているから、やはり地元は田舎だと思った。  相手の3人の男性は別の職場の塾講師。美衣の知り合いの知り合いらしい。知り合いはいないらしいが、普通は1人は共通の知り合いがいるものではないだろうか? 「山田大輔です。よろしくお願いします」 大輔は普通の小動物な感じの男性に見えた。たぶん合コンに慣れていない感じだ。どこか怯えたように目をキョロキョロ泳がせていた。 「田中英介といいます。こちらの2人は合コンに慣れていないのでよろしくお願いします」 田中英介は真面目なエリート男性に見えた。この3人のリーダー的ポジションだ。慣れたようにどっしり構えていた。 「……中山風太です……はい」 中山風太はネクラな感じで、引き立て役に見えた。私と同じように引き立て役だ。でも、私が引き立て役だからそう感じただけかもしれない。大人しい。 もしかしたら経験として合コンに誘われただけかもしれない風太――または大輔もそうかもしれない――は、英介にリードされていた。率先して話しかける英介と、愛想よく追随する大輔と、完璧に上の空のように黙りこくっている風太と、三者三様だ。男性陣から見ても栄子たちは同じように三者三様かもしれない、そう栄子は思った。 あるタイミングで、美衣のぶりっこの真骨頂が炸裂した。また引き立て役タイムが始まるのかと内心嫌だった。その猫なで声に栄子は寒気がした。 「佐藤先生の目、可愛い一重でしょ? 私なんて目が無駄に大きくて嫌よー」 「そんなことないですよ。鈴木先生も可愛い二重ですよ」 「鈴木先生って、スラっとしてスタイルがいいのよ。私なんか、無駄に胸が大きくて嫌になっちゃう」 「いやー、胸が大きい人もいいですよ」 「わたしー、2人と違って男性に頼らないとダメなのー」 「そういう女性もいいと思いますよ」 美衣は栄子と椎名を引き立て役として使っていた。栄子にとって予想通りだから苛立ちに免疫があったが、それでも実際にされるとやはり嫌なものだ。目が小さくて、胸が小さくて、男に頼らなくて、何が悪いの! そんな栄子の盛り下がりと対になるように、男性陣が盛り上がっていた。返事をしていたのは英介だけだったが、残りの2人も頷いたりリアクションしたり嬉しそうだった……いや、風太は直立不動の座り方だった。 栄子は嫌な思いをしていた。ぶりっこに対しても男性陣に対しても嫌だった。周りには自分の味方がいないと、熟練者だらけの宇宙ステーションに放り込まれた一般人みたいな思考だった。 そんな中をふと椎菜と目が合い、以心伝心した気がする。目を大きくして微笑んできた椎菜もおそらくこの状況を不快に思っているだろう。自分に唯一手を差し伸べてくれた彼女は、宇宙に彷徨った宇宙船が地球を発見したような気分だった。 「ちょっとお花摘んできますー」 美衣はお手洗いとして途中退席した。仲のいいもの同士だと作戦会議として席を外すことがあり、気になった者同士だとこのあとにどこかにふけるためにいなくなることは、栄子も漫画の知識として知っていた。しかし、美衣は一人だけいなくなったので、本当にトイレに行っただけか休憩だと思った。  美衣の姿が消えると…… 「引き立て役大変ですね」  田中英介は明るい雰囲気を変えてそっと静かに言う。その顔にはどこか意地悪な影が隠れていた。それは美衣に向けられた明確な皮肉に見えた。 「ぶりっこ、というものですか?」  中山風太は今までどおり静かに言う。どういう感情なのか、美衣にどういう見解を持っているのかはわからなかったが、言葉だけは美衣に対する皮肉に聞こえた。 「申し訳ないですけど、そういう人は苦手です」  山田大輔は2人に合わせて静かに言う。感情も言葉も美衣に対する明確な皮肉に感じた。ほかの2人に比べたらわかりやすい性格だ。 男性陣がぶりっこの引き立て役大変だと労ってきたことは、栄子には嬉しかった。今までは美衣の表面しか見ていなかったものばかりだったが、たまにはまともな人もいるものだ。栄子の世界が広がった。 英介→風太→大輔の順に労ってきたわけだが、この順番に女性に対する理解力が高いのかと思った。風太が大輔より女性の理解が高いのは意外だったが、誤差の範囲だとも思った。そう思った。 「気づいていたのですか?」 「そりゃあ、わかりますよ。大変でしょ?」 「そうなんですよ。私と木村先生がいつも犠牲になるんです」 「可愛そうですね。周りには理解してくれない人もいるでしょ?」 「いえ、鈴木先生にはいいところもあるんですよ」 「木村先生は優しすぎるんです。たまには悪く言ってもいいですよ」 男性陣が美衣の本性を理解していることが分かり、嬉しい。向こうの会話担当は基本的に英介でありたまに大輔であり風太は終始無言だが、言葉にしなくても風太も同じ事を考えていることは容易に想像ついた。椎菜は相変わらず遠慮がちな発言だが、不満を持っていることを示唆した言い方だった。 美衣の悪口などで盛り上がった。 「戻ってきましたよ」 「シー!」  美衣は陰口を叩かれていることに気づいていないように気持ち悪いぶりっこなスキップをしてきた。小さい子ならまだしも、いい大人がそんなことして恥ずかしくないのか? 内心みんな思っているだろう。 「何の話で盛り上がっているのー?」  美衣が戻ってくる。席について周りをキョロキョロ。猫のように気分屋だろう。 「好きな人のタイプとか」 「えー、いいじゃない! あとー、私は犬飼っているのー。可愛いのよ」  急に話題を変えてきた。自分が会話の中心じゃないと嫌らしい。いやらしい性格だ。 不満に思いながらも、さっきまでと同じように装う。美衣が裸の王様状態なので、内心で笑っていた。栄子は自分の性格の悪さに心を痛めながらも、楽しかった。 後日、栄子は大輔に誘われた。 翌日にラインで連絡が来たのだ。合コンの終盤にライングループを作ったから、そこから個人のラインにつなげてきたのだ。栄子はそういう経験がないからあたふたした。 「どうしよう、山田さんからラインが来た」 栄子はあの場にいた男性陣に悪い印象がなく、大輔にも好印象を持っていたので、早速会うことに前向きだった。どうしようというが、困るよりも喜んでいた。ベットの中でニヤニヤしながら足をばたつかせた。 しかし先程も言ったように、そういうことは今までの人生でなかったので、罠ではないかと警戒した。だから、椎菜に相談した。美衣に相談するのはしゃくだった。 栄子の見立てでは、椎菜はこういうことに経験不足でも、少しは経験があると判断した。最悪経験がなくても、常識はあると思った。とりあえず美衣には相談したくないと思った。 「これって、どうしたらいいと思います?」 「自分の好きなようにしたらいいと思うわ。それしか私には言えない」  ラインの画面を見せた。それを2人で井戸の中を覗き込むように見ながら、うーんと唸った。男女の関係は当人にしかわからないうえ、当人が経験不足だから思考が底に溺れるようなものだった。 「でも、これって、罠かもしれないです」 「罠って?」 「その……ビックリさせるための嘘とか……実は高額商品を買わされるとか……集団レイプされるとか……」  栄子は頭を混乱させながらしどろもどろに言う。経験がないから身から出るものものではなく、ドラマや漫画からの知識を頭でっかちに述べるだけだった。だから、どこかふわふわしている。 「……ふふっ。可愛いわね佐藤先生」 「かわっ!?……からかわないでください」  椎菜が笑い、栄子は耳が赤くなった。自分でも変な事を言っているのを理解しているが、椎菜なら笑わないと期待したのに裏切られた気分だ。でも、椎菜が笑うくらいなら自分の挙動不審がおかしかったのだと納得するくらい信用していた。 「安心して。そういうことはほとんどないわ。漫画とかのドラマに影響受けすぎよ」 「そういうものですか?」 「そうよ。それに、その山田先生……でしかっけ? 変な人には見えなかったわ」 「そうですかよね?」  栄子は求めていた言葉を引き出すことに成功した。自分の思ったことに対する同意だった。こういう相談事は、意見を求めているのではなく同意を求めているのが世の常である。 「そうよ。確実ではないけど、私もそれなりに人を見る目があるのよ」 「そうですよね。木村先生がいうのなら大丈夫ですよね!」  栄子はぐわっと椎菜に顔を近づけた。それは栄子のスマホを眺めている椎名がスマホから視線を栄子に移すくらい近いものだった。椎菜は少し驚く。 「……そう詰め寄られたら困るけど、大丈夫だと思うわ」 「そうですよね。うん。そうですよね」  栄子は自分に言い聞かせた。 「失礼します」  美衣が職場に来た。栄子は驚いて背筋がピンとなった。美衣はいつもどおり普通に仕事に来ただけですが、栄子には急に来たように錯覚した。 「木村先生、今の話は鈴木先生には内緒で……」 「わかったわ」  2人が小声で話していると…… 「ねぇー、何の話―?」 「いえ、あの、アニメの話を……」 「いいじゃない。そういえば私、昨日見たドラマで……」  美衣は再び自分の話をし始めた。本来ならば自分本位な会話技法なので腹たつが、話を逸らしたい今の栄子にはありがたいことだ。いつもどおり物事が進んだ。  後日、栄子は大輔と付き合うことになった。そのことを職場で椎名に伝えた。周りにほかに誰もいないことを確認した。 「木村先生、私、山田先生と付き合うことになったんです」 「そうなの? じゃあ、私も報告しないと」 「何をですか?」  微笑む椎菜に対して、栄子は首をかしげる。言い方からしたら自分の報告と対になることらしい。でも、対になることといえば…… 「実は私も、田中先生と付き合うことになったのよ」 「えー!? そうなんですか?」  それしかないと思いながらも栄子は驚いた。栄子にとって、そういう彼氏の出来た報告をし合うことはなかったからだ。とてもとても可愛い理由。 「そうなの。黙っていてごめんね。自分だけ付き合っていたら悪いかなぁーと思って」 「そんなことないです。田中先生といったら、あの真面目そうな人ですよね?木村先生とならお似合いじゃないですか」 「そんなことないわよ」 「そんなことありますよ」  2人はキャッハウフフとしていた。お花畑な会話をしていた。傍から見たらチョコがとろけるような馬鹿だった。 「でも、すごいわね。あの合コンでカップルが2組できるなんて」 「たしかにそうですね……って、私合コンのことわからないですけど」 「珍しいわよ」 「でも、もしかしたら、鈴木先生も……」 「佐藤先生、木村先生、また合コン行かないですか? 私彼氏できないんですー」  美衣が仕事場にやってきた。美衣はカップル成立できなかったらしい。美衣は懲りずに合コンをしようとした。  栄子は大輔と付き合うことになった。栄子は合コンを催してくれた美衣に少しは感謝した。しかし、癪だから伝えることも感謝することもしなかった。 椎菜と英介も付き合うことになった。それに対して椎菜どう思い、美衣に伝えるのかは不明だ。もしかしたら栄子と同じ言動を取るが、違う言動を取る場合もある。 栄子は内心で美衣を馬鹿にしながら、幸せだった。美衣だけに彼氏ができなかったのは、今までぶりっこで自分たちを引き立て役に使ってきた罰だと思った。相手を思いやる気持ちのないものは幸せになれないのだと思う。  栄子は大輔とデートをする。合コンをした隣町でショッピングデート。2人で幸せそうに歩き話し楽しむ。 その様子を影から見ているものがいた。美衣だった。そして、美衣は不敵に笑っていた。 「成功したわ」  独り言を不気味に呟く。 「それにしてもあの2人、彼氏がいなかったなんてもったいない。これで一安心だ」 美衣はぶりっこという引き立て役をすることによって周りでカップル成立するのを喜ぶ性質だった。自己犠牲によって、周りを助ける気質の恋愛バージョンだ。周りはそのことに気づいていない。 美衣は黙ってこれからもぶりっこを続けるつもりだ。
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