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写真を眺めて感慨にふけっていると、ベランダに足音がした。
おや、啓介が昼休みに帰ってきたのだわ。
いつもは店で皆と一緒に店屋物を食べるのに、どうしたのかしら。
「お昼、家で食べるの?何か作ろうか?」と聞くと、
「いや、そうじゃなくて……」
何やらモゴモゴ言っているが、なんだか聞き取りにくい。
「どうしたのよ」
「いや、あのさ…これを…」
と差し出したのは…
花束!バラの!
「えっ!何、これ!」
「何って…花…」
「だから…えっ!どうしたのよ」
「急に思い出したんだよ。結婚記念日だって」
「えーーーーっ!どうしたの?どうしたの?」
「いらないなら店のトイレにでも飾るよ」プイと引っ込めようとする。
「いやいやいや引っ込めちゃだめ!」
私は花束をガッシとつかんだ。
「うふふ…ありがとう!」
「最初からそう言えよ」
「いやもう、あんまり嬉しすぎて」
「嬉しいのなら、もうちょっとマシな反応しろよ」
「仕方ないじゃない。こんなこと初めてなんだもの」
いつものように、何だかんだと言い合いながら、二人で写真を眺める。
「ここにに並べた写真は、啓介と私の足跡だね。
楽しいときしか写真撮ってないから、めちゃめちゃ楽しい人生って感じじゃない?
ふふふ…でも…ぜんーぶ楽しかったわ。
これからどんな写真が増えていくかなぁ。楽しみ!」
(完)
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