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「ありがとう」
僕はクロエのその言葉を聞いてからベッドに横たわり、静かに目を閉じた。だけど、全くと言っていいほど眠気は襲ってこない。それくらい、身体の疲れがすっかり抜けきったということなのだろう。だからといって、もう一度起き上がってクロエを見ているわけにもいかないから、僕はそのまま目を閉じ続けた。
僕は目を閉じたまま、これからのことを考える。僕はいったいいつまでここに閉じ込められるのだろうか。いったい、これからどんな生活が待っているのだろうか。クロエはいずれ反対派のメンバーとして現場に戻っていくのだろうか。そして、僕のチームのメンバーたちはどうしているのだろうか。
だけど、どんなに考えてもわからないことばかりだ。ただ、不思議なことに、あんなに感じていた不安はどこかに消え去ってしまっている。あるいは、クロエと二人きりになってしまったからかもしれない。彼女にはどこか、僕を安心させるような雰囲気がある。見た目のせいかもしれないし、話し方のせいかもしれない。些細な仕草のせいかもしれない。いずれにしても、彼女は僕にとって、心地の良い存在であることは間違いない。そもそも、女性と二人きりであるというにも関わらず、こんなにも緊張感なく話をすることができるということに、僕自身が驚いている。ある意味で、クロエは僕にとって特別な女性なのかもしれない。彼女にとって僕がどうなのかはわからないが。
しばらくそのまま目を閉じていると、クロエの方から、
「ねえ、アタルさん。もう寝た?」
と声をかけてきた。僕はゆっくりと目を開けて、
「いや、まだ寝ていないよ」
と答えた。それからゆっくりと身体を起こして、ベッドに腰かける。僕が目を瞑っている間に、クロエは昼食を終えていた。
「ねえ、アタルさんのこと、いろいろと教えてほしいの」
クロエはそう言った。
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