After the Earthquake

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 僕がアメリーに連れて行かれたのは、窓のない小さな部屋だった。部屋の中央部にはステンレス製の机が置いてあり、それを挟んで向かい合うように椅子が置いてある。まるで、取調室のような雰囲気があり、僕は息が詰まりそうになる。アメリーは僕を奥に座らせて、自分は手前の席に腰を下ろした。 「アタル君、気分はどうかしら?」 「ゆっくり眠ったおかげで、ずいぶん楽になった。その点については感謝する」 「あら、感謝なんていいのよ。あの部屋の使い心地はどうかしら?」 「悪くはないと思う。眠るだけなら十分すぎるくらいだ。だけど、いささか物足りない。テレビもラジオも、娯楽という娯楽がない」  僕の言葉に、アメリーはフッと小さく笑う。 「そんなに暇なら、あの子を襲ったらいいじゃないの。お前だってセックスは嫌いじゃないだろうに」  僕は耳を疑った。まさか、アメリーの口からそんな言葉が飛び出してくるとは思ってもみなかったからだ。それに、アメリーのこれまでの態度を見ていても、クロエのことを気に入っていて、大事にしようとしていたようにしか見えない。だから僕は聞き間違いだと思って、アメリーに訊きなおした。だけど、アメリーはもう一度、同じ言葉を口にした。僕はどう言葉を返していいのかわからず、ただ彼女の顔を見ていることしかできない。 「どうしたのかしら? 驚いているの?」 「正直に言って戸惑っている。そして、軽蔑もしている。君たちはそんなに仲間を軽視しているのか? 彼女はあんなにも君のことを慕っているのに」 「仲間?」  彼女は首を傾げた。僕にはその理由がわからない。 「だって、彼女は反対派なんだ。君たちの仲間だろう? それとも、賛成派に拉致されてしまったから信じられないとでもいうのか?」  僕の言葉に、またアメリーは首を傾げる。僕にはますます訳がわからなくなる。仕方なく、僕はアメリーからの言葉を待つ。すると、アメリーは僕をじっと見据えながら、落ち着いた口調で言った。 「お前は完全に勘違いしているわね」 「僕がいったい何を勘違いしているっていうんだ?」  アメリーの言葉に僕は得も言われぬ苛立ちを覚え、つい口調を荒げて彼女に尋ねる。だけど、彼女は全く動じる様子も見せない。ただ、落ち着いて、何度か小さく頷く。 「たしかにはっきりと否定しなかった私も悪かったかもしれないわね」
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