After the Earthquake

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 アメリーはもったいぶるようにそう言うと、もう一度頷いた。 「だから、いったい何なんだよ。言いたいことがあるなら、さっさと言えばいいだろう?」 「そうね」  アメリーはそう前置きすると、小さく咳払いしてから、 「私は自分たちが反対派だなんて言った覚えは一度もないわよ」  と言った。その言葉は、僕の頭を一瞬で真っ白にするには十分すぎるくらいだった。僕は池の表面に浮かぶ鯉のように、口をパクパクと動かすことしかできない。何を喋ろうとしても、頭の中がぐちゃぐちゃになって言葉が出てこない。 「そんなに驚かなくてもいいじゃないのよ」  アメリーは可笑しそうに笑いながらそう言った。 「いや、ちょっと待ってくれ。反対派じゃないとしたら、いったい君たちは何者なんだ?」 「それは、今は話せないわ。だけど、少なくとも賛成派でも反対派でもないわ。あ、でも、あの子にはまだ黙っておいてくれるかしら? あの子は私のことを反対派の幹部だって完全に信じちゃってるみたいだし、それがあの子に安心感を与えているみたいだからね。そのかわりと言っては何だけど、お前があの子を襲ったとしても不問に付すわ」 「そんなこと言って、非常ボタンが押されたら駆けつけてきて僕を捕らえるんだろう?」 「そんなことしないわよ。しかも、あの非常ボタンはただの飾りで、何の役にも立ちはしないもの」  アメリーはそう言うと、また可笑しそうに声を上げて笑った。  僕は何もかもがわからなくなってしまった。僕だってアメリーたちを完全に反対派だと信じ切っていた。だけど、彼女たちが反対派でないとすると、いったい何者だというのだろうか。どう考えても、彼女たちも地下組織の人間だ。それも、この特別基地を見る限り、決して小さな組織ではないだろう。この日本に、賛成派と反対派以外の巨大地下組織があったというのだろうか。だけど、僕はそんなものをこれまでに耳にしたことは一度もない。
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