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アメリーたちの組織の目的もわからない。賛成派に与するものなのか、反対派に与するものなのか、あるいはそのどちらとも敵対するものなのか。目的がわからない以上、余計な情報を与えるわけにもいかない。とはいえ、僕の知っていることは、拉致された時点ですべてアメリーに話してしまっているから、これ以上話すことなどない。だけど、彼女たちの組織はおそらく膨大な量の情報を持っているに違いない。なにせ、通常はメンバーでさえ知らないようなクロエの本名や年齢などの情報も持っていたのだ。もしかすると、彼らのデータベースには、賛成派と反対派のすべてのメンバーの情報が入っているのかもしれない。だとすると、賛成派にとっても反対派にとっても、敵となれば強大なものになるに違いない。
アメリーはそれから僕にいくつかのことを尋ねてきた。その殆どが、僕が拉致されてから今日に至るまでのチームの行動に関することだった。さすがに各チームの行動に関する情報までは集めることができないのだろう。僕はそれらの質問に、慎重に言葉を選びながら答えた。そして、三十分ほどそんなやりとりが続いた後、僕は部屋に戻された。そして、別れ際にアメリーは言った。
「まあ、心配しなくていいわよ。決してひどい扱いはしないから。お前も彼女もね」
部屋に戻ると、クロエは本を読んでいた。僕が連れていかれるときにアメリーに頼んだ本が届いたのだろう。そして、彼女は僕が部屋に入ってきたことに気づくと、本に落としていた視線を上げて、僕の方を向いて手を振ってくれた。
「ただいま」
僕はクロエにそう声をかけた。
「おかえりなさい。さっそく、十冊ほど本を届けてくれたの。全部小説みたい。暇潰しには十分ね」
「そうだね」
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