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「アメリーたちは危険だ。僕は大きな勘違いをしていたらしい」
「アメリーさんたちが危険ってどういうこと? 反対派だから? たしかに、賛成派のアタルさんにとって、反対派の人間は誰だって危険かもしれないけど」
「そういうことじゃないんだ」
「じゃあ、どういうことよ?」
クロエの問いに、僕は一呼吸置いてから、落ち着いて答える。
「アメリーたちは反対派じゃない」
僕の言葉に、再びクロエの動きが停まった。そして、何かを考えるように、ぶつぶつと何かを呟く。その声はとても小さくて、僕にはきちんと聞き取れない。そして、三十秒ほどそうした後で、彼女ははっきりとした口調で言った。
「反対派じゃなかったら、何者なの? 賛成派?」
「反対派でも賛成派でもない。得体のしれない人間たちだ」
「どういうこと? アメリーさんたちのことを反対派だと教えてくれたのは、アタルさん自身でしょう?」
「僕だってそう信じて疑わなかったんだ。だってそうだろう? 賛成派の僕を拉致して、賛成派の情報を聞き出したんだ。誰だって反対派だと思うさ」
「だったら、どうして今さらになってそんなことを言い出すの?」
クロエはどこか苛ついているように見える。どうして彼女がそんなに苛つくのかはわらかない。あるいは、ようやく見つけた自分の居場所が、理不尽に奪われるような気がして僕を許せないのかもしれない。だけど、僕はそんな彼女の苛立ちを和らげてあげるだけの言葉を持っていない。僕にできるのは、せめてアメリーに言われたことをそのままクロエに伝えることくらいだ。
「さっき呼ばれて行ったとき、アメリー自身が言ったんだ。自分たちは反対派じゃないって」
「じゃあ、アメリーさんたちはいったい何者なのよ?」
「わからない。訊いてみたけど教えてくれなかった」
「ねえ、どうしてそんな嘘を吐くの? そんなに私が信用できないの?」
「そういうことじゃない。もしも君が嫌だというなら、無理に誘いはしない。だけど、僕が逃げるのだけは見逃してくれないか?」
僕がそう言うと、クロエは俯き、
「そんなこと、できるわけないじゃない」
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