After the Earthquake

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 車は長い坂道を下っていく。灯りの点いていないトンネルの中でも走っているのか、窓の外は真っ暗で何も見えない。まるで、地球の奥深くの方まで突き進んでいっているような気分になる。やがて、道は平坦になる。そして、窓の外から明かりが差し込んだと思うと、車はゆっくりと停車した。 「着いた。降りるぞ」  僕はアーサーのその言葉を合図に、ドアを開けて車から降りる。そして僕に続いて他の四人も車から降りてくる。  僕たちが降り立った場所は小さなホールのようになっていて、他にも同じようなワンボックスカーが何台か停まっている。そして、それらの車からは、僕たちと同じように、五人組が下りてくる。五人で一チーム。これが賛成派の決まりだ。  アーサーは僕たち四人の前に立つと、一度小さく頷いてから、 「行くぞ」  と声をかけ、背を向けて歩き出す。グレイが慌ててその後に続き、僕とケイトとケンもその後を追う。  アーサーはホールの隅にある扉を開け、その先に続く通路を迷うことなく進んでいく。この通路の先に何があるのかなど僕にはわかりもしないが、ときどき奥の方から聞こえてくる熱気に溢れた声に、僕の心は鼓舞される。そこには間違いなく多くの同志が待ち受けているのだということが僕にはわかる。  やがて僕たちの前に、大きな扉がはだかった。アーサーは扉の前で立ち止まると、一度大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと扉に手を当てた。それから彼女はゆっくりと手に力を込めて、扉を開けてゆく。扉の隙間から、同志たちの雄叫びと熱気が溢れ出してくる。そのあまりの迫力に、僕はゴクリと唾を飲んだ。  アーサーが完全に扉を開け切ると、そこには大きなスタジアムのような空間が広がっていた。真ん中の円形の舞台を中心にして、すり鉢状のスタンドが三層に築かれている。ざっと見た限りでも、三万人は収容できそうだ。そんなスタンドが、すでに半分以上が埋まっている。そして、誰もが興奮に胸を躍らせているように見える。  アーサーはそんな中を、冷静にメンバーを引き連れて歩く。そして、ある地点で立ち止まると、スッとその席に腰を下ろした。あらかじめ定められていた席なのかそうでないのかはわからないが、少なくともアーサーに迷いの表情はない。そして、彼女に続いてグレイ、ケイト、ケン、僕の順に並んで腰を下ろした。 「初めて密会場に来たけど、まさかこんな凄い施設とは」
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