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「部屋の扉がノックされたら、僕が女性の対応をするから、君は扉の死角になる場所に隠れておいて欲しい。そして、女性が完全に部屋に入ったら、気づかれないようにゆっくりと扉を閉めてくれ。完全に扉が閉まり切ったら、僕が女性を取り押さえる。だから、君が女性の身体を探って、鍵を探してほしい。少なくともここに入ってくるためには、この部屋の鍵も、鉄格子の鍵も、廊下の鉄の扉の鍵も持っているはずだ。それを奪ったら、僕たちはこの部屋を脱出する」
「だけど、この部屋を出てからどうするの? ここが地上か地下なのかもわからないのよ? どの方向に向かえば建物から出られるかもわからない。現実的じゃないわ」
「大丈夫だ。僕たちがこの建物に入ってきたあの入口は、内側から手で鍵が開けられるようになっていた。そして、少なくともそこには車で乗り付けたわけだから、外に繋がっているはずだ。建物から出た後のことは、それから考えたらいい」
僕がそう言うと、クロエは再び俯いた。僕の話を聞いたところで、まだ決心はできないのだろう。アメリーを疑うべきか僕を疑うべきか、まだ決めかねているのだろう。どちらにしても、僕が立てた計画は、僕一人では実行不能だ。彼女の助けが必要になる。彼女が首を縦に振ってくれなければ、どうしようもなくなってしまうし、諦めざるを得ない。その時は僕も、アメリーの言葉を信じて、ここでじっと時が過ぎていくのを待っているしかないのかもしれない。
クロエはなかなか答えを出してくれない。ただ黙ったまま、天井を見つめたり、部屋の中を歩き回ってみたりしている。そうしている間にも、刻々と時間は過ぎていく。夕食が何時に運ばれてくるのかはわからないが、一般的に考えれば、午後六時から午後七時までの間には運ばれてくるだろう。
時計を見ると、五時半をとっくに回っている。夕食が運ばれてくる時間は刻一刻と近づいてきている。もちろん、今回の夕食時に限定して計画を実行する必要はない。明日の朝でも、明後日の昼でも、タイミングを見て実行すればいいだけの話だ。だけど、僕たちの無事だっていつまで保証されているかわかりはしない。だとすれば、少しでも早い機会を狙うのが常套手段というものだろう。
「で、君はどうする?」
僕はわざとに答えを急かすようにクロエに言った。
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