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と、クロエが背後から言う。だけど、僕はそれに答えることができない。そして、僕の脇から顔を覗かせたクロエも、僕と同じように凍り付いた。
「アタル君、どういうことかしら?」
冷たい声が辺りに響く。目の前にはアメリーとあの男たち。三人で完全に僕たちの行く手を塞いでいる。僕は思わず後ずさりする。だけど、それを許さないと言わんばかりに、アメリーは僕との距離を詰めてくる。僕は諦めて、ただその場に立ち尽くして俯いた。そんな僕の肩に、アメリーはポンと手を置いた。とにかくクロエだけでも守らなければ。僕の中にそういう気持ちが湧き上がってくる。
「アメリー、この逃走劇は僕が企てたものだ。クロエは僕に騙されてここまでついてきただけだ。彼女は何も関係ない」
僕は顔を上げて、アメリーに訴えた。だけど、アメリーはニヤリと不敵な笑みを浮かべるだけで何も言わない。アメリーが何を考えているのか、僕には全くわからない。どちらにしても万事休すだ。もう、僕たちが逃げ出すことなど叶わない。
アメリーは僕とクロエを鉄格子の中まで押し戻すと、しっかりと鉄格子の扉に鍵をかけた。このまま僕たちは殺されるのかもしれない。そう思うと、恐怖で体が震える。僕の隣で、クロエも身体を小刻みに震わせている。そんな僕たちに、アメリーは微笑みを投げかけてくる。
「ついて来なさい」
そう言うと、アメリーは廊下を僕たちの部屋の方に向かって歩き出した。そして、僕たちの部屋の前まで行くと、倒れていた給仕係の女性の頬を叩いた。女性は目を開けて、辛そうに身体を起こす。そんな女性の耳元で、アメリーが何かを囁く。その声は僕たちには聞こえなかったが、アメリーが離れると、女性は僕たちの部屋から出ていった。
「入りなさいよ」
アメリーは僕たちにそう指示した。僕とクロエは一度顔を見合わせてから部屋の中に入り、それぞれのベッドに腰を下ろした。
「僕たちを殺すつもりか?」
僕はアメリーに尋ねてみた。
「どうしようかしら。だって、お前は私の言いつけを守らなかったもの。お仕置きが必要かもしれないわね」
「さっきも言ったけど、クロエは僕に騙されただけだ。罰するなら僕だけで十分だ」
「まあ、ずいぶん彼女のことを庇うのね」
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