After the Earthquake

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 僕は会場の中を見回しながら思わず声を漏らす。そんな声に、すかさずケンが反応する。 「俺もここに来るのは初めてっすよ。この五人の中でここに来たことがあるのはアーサーくらいじゃないっすかね」 「グレイは? サブ・リーダーなんだろう?」 「どういう経緯で選ばれたのかはわからないっすけど、サブ・リーダーなんてあってないような肩書っすよ。だいたい、あんな奴がまともに戦えると思うっすか? 今だって、ほら、ガタガタ震えてるっす」  ケンの言葉に、横目でグレイを見てみると、たしかに俯いてガタガタと小刻みに震えている。チームを率いていくような人間にはとても見えない。ケンはグレイを完全に蔑むような目で見ている。他人を蔑むのはどうかと思うが、僕としてもグレイに付いていきたいという気持ちには、残念ながら少しもなれない。 「それよりも」  ケンはそう言うと、僕の耳元に寄ってきて、小声で囁く。 「ケイトっていい女だと思わないっすか? めちゃくちゃ色っぽいっすし」  僕はケンの言葉に戸惑い、言葉を失った。どのように反応すればいいのか、皆目見当もつかない。そんな僕を見て、ケンはニヤニヤと笑っている。ケンが僕にどんな反応を求めているのかはわからないが、とりあえず僕は無視を決め込むことにした。だけど、ケンはそんな僕の心情を見透かしたかのように、追い打ちをかけてくる。 「ねえ、アタルさん。ケイトと一発やってみたいって思わないっすか?」  その言葉に、僕は思わずカッとなって言い返す。 「そんなこと思わない。だいたい僕たちはそんな目的で集まったわけじゃないだろう?」 「でも、本格的な戦闘にでもなれば、いつどこで命を落とすかわからないんっすよ? だったら、そうなる前に、いい女と一発やりたいって思うのは、男として当たり前っすよ」  僕は呆れて、思わずため息を吐いた。たしかに、ケンの言うとおり、ケイトがいい女だということは認める。だからといって、僕は同志として集まっている彼女に対して、そんな不埒な思いを抱くことなどできない。とはいえ、これ以上、ケンとこのことについて話し合っても、話は平行線を辿るばかりだろう。やはり、こういうときには無視しておくに限る。  僕はもう一度ため息を吐いて、視線を舞台の方に移した。その瞬間、ケンの向こう側から、ケイトの声が飛んできた。 「ねえ、二人で何を話してるのよ?」
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