After the Earthquake

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 そして、拍手が鳴りやんだところで、キンバリーは再び口を開いた。 「最初の我々の標的は、愛知県庁と名古屋市役所の爆破だ。爆破攻撃には、爆破をもって報復する」  僕はその言葉に、小さく頷いた。  キンバリーが愛知県庁と名古屋市役所を標的に選んだ理由は僕にも簡単にわかる。大阪を賛成派の一大拠点とするならば、名古屋は反対派の一大拠点だ。愛知県知事も名古屋市長も日本からの独立には反対の立場を示しているし、住民の多くも日本からの独立に反対している。首都東京が崩壊した今となっては、大阪と名古屋がその覇権を争っている。名古屋としては、大阪やその他の地方の独立を阻止し、一気に覇権争いに片を付け、日本のトップに躍り出るつもりなのだろう。  愛知県庁と名古屋市役所が爆破されれば、一気に行政機能が崩壊し、反対派に大きな打撃を与えることになるだろう。それだけではなく、一般住民の間でも独立の機運が高まるに違いない。そういう意味では、まさに的を射た攻撃目標と言えるだろう。会場中の誰もが納得した表情を浮かべている。 「さて、今回の攻撃には、三チームに参加してもらう。参加チームには、チーフを通じて連絡する。今回の攻撃に参加しないチームも、今後はどんどん攻撃に参加してもらうことになる。ついては、同志たちには、今ある日常を捨ててきてもらうことになる。いつでも攻撃に参加できるよう準備しておいてもらいたい」  キンバリーはそれだけ言うと、最後にもう一度会場の中を見回し、颯爽と舞台から消え去っていった。会場の中は相変わらず静けさに包まれているが、ふつふつと底の方から沸き上がる熱気を感じることができる。みんな、会場からなかなか出ていこうとしない。結局、三十分ほどそんな時間が続き、ようやくぱらぱらと帰宅の途に就く者が現れ始めた。僕たちも、その熱気に名残惜しさを感じながらも、会場を後にして帰宅の途に就いた。  自宅に戻ったのは、午前五時を少し回ったころだった。ひどい眠気が襲ってきているが、このまま寝てしまったら、しばらく起きることができそうにない。僕は遅くとも午前七時には目を覚まして、会社に行かなければならない。もっとも、そんな生活も今日で最後になるのだが。
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