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そんな僕の前には、入口の蓋と同じくらい重厚な扉が立ちはだかっている。アーサーはドアノブに手をかけて、ゆっくりと扉を開けていく。中から少しずつ光が漏れ出し、僕とアーサーの身体を包みこむ。そして、扉が完全に開くと、僕の目の前に、八畳ほどの空間が姿を現した。そこには他のメンバーの姿もある。どうやら僕が最後にやって来たらしい。
「さあ、入って」
僕はアーサーに促されて、部屋の中に入った。部屋の中には、電気コンロ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、テレビ、そのほか生活に必要となるようなものは一通り揃っている。壁には棚が設置してあり、そこには食料の缶詰やミネラルウォーターがぎっしりと並べられている。本当にしばらくの間はこの部屋から出なくても生きていくことができそうだ。
僕の姿に気づいたケンが、
「アタルさん、遅かったっすね。僕なんか、三時からここにいるっすよ?」
と言った。
「三時から? だけど、僕への指示は」
僕が言いかけると、アーサーが言葉を遮った。
「一斉に集まればどうしても目立ってしまう。だから私の指示で、集合する時間をずらしたんだ。アタルに指示した時間は午後五時。時間ちょうどだ」
その言葉に、ケンは納得したのか、
「わかったっす。集まるだけでも大変っすね」
と、何度か小さく頷いて、ごろんと身体を横たえた。
そんなケンの隣で、グレイとケイトはテレビ画面に見入っている。いったい何をそんなに真剣に見ているのだろうと思いながら、僕はケイトの隣に腰を下ろし、テレビ画面に視線を向ける。画面の中にはもうもうと煙を上げる大きな建物が映し出されている。
「アタル、愛知県庁と名古屋市役所の爆破が上手くいったわよ」
ケイトが視線をテレビの方に向けたまま言った。
「爆破が上手くいったって、いったいいつ?」
「三十分前。午後四時半ちょうどよ」
ケイトは少しだけ視線を僕の方に向けて答えた。
「ちょっと待った。ということは、職員や来客がある状態で爆破したということか?」
「もちろん、そういうことよ」
「どうしてそんなことを。愛知県庁や名古屋市役所を爆破するのなら、誰もいない真夜中だって構わないはずだ。人がいるときに爆破するなんて、無駄な犠牲を出すだけだろう?」
僕の問いかけに、ケイトは何も答えなかった。代わりにアーサーが僕のそばに寄ってきて答える。
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