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「お疲れ様。今日から私たちはこの隠れ家でしばらく過ごしながら、本部の指示を待つことになる。本部の指示があるまでは何をしていても自由だが、人目に付くことは避けたいので、外出は我慢してもらいたい。それから、外部への連絡は絶対にダメだ。電波でこの隠れ家が嗅ぎつけられては困るからな。ルールどおり、全員、私物の携帯電話の電源は切っていると思うが。その点は確実に守ってくれ」
アーサーの言葉が終わると、すぐにケンがすっと手を挙げた。
「アーサー、本部からの指示はいつ来るっすか?」
「それはわからない。明日かもしれないし、一週間後かもしれない。もしかすると、一か月後かもしれない」
「例えば一か月後だとして、それまでここの食料がもつっすかね?」
「食料に関しては心配しなくてもいい。なくなりそうになれば補充される」
「だったらいいっす。俺、空腹だけは耐えられないっすから」
ケンはそう言うと、ヘヘッと小さく笑いながら頭を掻いた。アーサーはそんなケンをあきれ顔で見ながら、
「他に質問は?」
と、他のメンバーを見回す。僕は他のメンバーが手を挙げないのを確認してから、静かに手を挙げた。
「アタル、どうした?」
「こういう状況になるとは思っていなかったんで、僕は必要最低限の下着や洋服くらいしか持ってきていないんです。ここで黙って本部からの指示を待つといっても、ここにはテレビくらいしか時間を潰せるものはありません。できれば、一度家に帰って、本か何か持って来たいんですが」
僕が質問すると、アーサーの顔が少しだけ歪んだ。僕の質問は、彼女にとって好ましくないものだったのだろう。アーサーは眉間に皺を寄せたまま、
「さっきも言ったが、外出は我慢してもらいたい」
と、釘を刺すように言った。
僕としてもアーサーの言わんとすることがわからないわけではない。だけど、こんな狭い部屋にこれといった娯楽もなく長時間閉じ込められるのは、あまりにも苦痛だ。言い方は悪いかもしれないが、まるで囚人のようではないか。僕は少し納得がいかなかったが、だからといってチーフであるアーサーに逆らうわけにもいかず、出かかった言葉をぐっと飲みこんだ。
すると、突然、予想もしていなかった方向から、僕に向かって声が飛んできた。
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