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「本だったら、僕がそれなりに持ってきている。趣味が合うかどうかはわからないが、部屋の隅の方に置いておくから、自由に読んでもらって構わない」
声がした方に視線を向けると、グレイが僕の方を見て、笑顔を浮かべていた。
「ありがとうございます」
僕は礼を言って、小さく頭を下げる。そんな僕に、グレイは黙ったまま、気にするなと手でジェスチャーする。グレイがいったいどんな本を読むのか気にならないわけではないが、その質問は控えておくことにした。その答えは、後で本を見てみればわかることだ。それよりも今はアーサーの話を聞くほうが先だ。
「他に質問は?」
アーサーがもう一度メンバーを見回しながら尋ねた。だけど、誰も手を挙げないし、口も開かない。それを確認すると、アーサーは目を瞑り、一度小さく頷いた。
「それでは、ここの設備について簡単に説明しておく」
アーサーはそう言うと、食品の並んだ棚の横にある扉を開いた。メンバーはみんな立ち上がって彼女について行く。アーサーが開いた扉の先は、二畳ほどの正方形の部屋になっていて、右手、正面、左手にそれぞれ扉がついている。アーサーは最初に右手の扉を開くと、
「ここがトイレだ」
と説明する。覗き込んでみると、そこには確かに洋式の便器が設置してある。
次にアーサーは正面の扉を開き、
「ここはシャワールームだ」
と言った。そこは一畳ほどの広さで、シャワーが一つ設置してある。そして、アーサーは最後に左手の扉を開ける。
「ここは武器庫だ」
アーサーはそう言うと、部屋の中に入っていく。それに続いて、メンバーも武器庫の中に入っていく。そこには拳銃やライフルといった武器から、催涙スプレーなどの道具まで、様々なものが取り揃えてあった。これだけの物をどのようにして調達したのか僕にはわからない。もちろん、アーサーが一人で集めたということもないだろう。まず間違いなく本部がこれだけの武器を用意したのだろうが、それにしても想像できる範囲を大きく超えている。もしかすると、賛成派の組織は僕が思っているよりもずっと強大なのかもしれない。だとすると、反対派だって賛成派と同じくらい強大な組織である可能性が高い。これは本当に戦争になるかもしれない。そう思うと、いやでも恐怖感がこみあげてくる。
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