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それはそうと、他のメンバーはどうだかわからないが、少なくとも僕はこれまでの人生で銃など触ったこともなく、いきなりそんな物を渡されても使い方がわからない。ここでそのことをアーサーに伝えておくかどうか迷っていると、僕よりも先にケイトが口を開いた。
「ねえ、アーサー。いきなり銃を使えなんて言われても、私には無理よ。だって、これまでに銃なんて使ったことないんだもの」
ケイトの言葉に、ケンもグレイも小さく頷く。どうやら銃を使ったことがなかったのは僕だけではなかったらしい。僕はそのことに少しだけ安心した。
「心配しなくても大丈夫だ。銃の使い方については、おってレクチャーする」
「ということは、アーサーは使ったことがあるんっすか?」
ケンが至極まっとうな質問をぶつける。
「私は一応レクチャーを受けて、それなりの訓練も受けている。もっとも、人を撃ったことはないがな」
アーサーはさも当然のようにそう答える。彼女の言葉からすると、おそらくチーフ以上の身分にある人間は、組織からそれなりの訓練を施されているのだろう。そうなってくると、アーサーがいったいどんな経緯で賛成派に加わり、これまでどんな訓練を受けてきたのか気になるところだ。気持ちとしては今すぐにでもそれを確認してみたいが、アーサーの放つオーラがそれを決して許してくれそうにはなかった。
「最後に、一つずつ取ってくれ」
アーサーはそういって、床に置かれた青色の袋を指さした。
「それは?」
ケイトが尋ねる。
「寝袋だ。ここには残念ながら布団などというものはないからな。全員寝袋に入って寝てもらう。最初は慣れないかもしれないが、使い慣れてくるとなかなか心地いいものだ」
アーサーはそう言うと、自分の寝袋を取って、さっさと元の部屋に戻っていった。残された僕たちは黙ったまま互いに顔を見合わせてから、一人ずつ寝袋を手に取り、元の部屋に戻った。
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