After the Earthquake

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 諸外国はそんな日本に多くの支援の手を差し伸べてくれたが、もはや日本という国家の崩壊と没落を押し止めるだけの方策などありはしなかった。世界の各地で日本企業の株式が売却され、株価はあっという間に暴落してゆく。日本国債の格付けも一気に引き下げられ、国内外を問わず、日本という国家に対する信用不安が煽り立てられる。誰もが日本はもうダメだと信じて疑わなかった。もちろん、僕もそんな中の一人だったわけだが。  とはいっても、決して日本全体が壊滅的なダメージを負ったわけではない。震源から離れた西日本や北海道はほとんどダメージもなく、それまでと変わらず都市機能も維持されていた。しかし、首都圏の崩壊が被害のなかった他の地方に重く暗い影を落とすまでに、それほど時間はかからなかった。被災者を支援するために物資が次々と首都圏に運び込まれ、そのために地方の物資は次々と不足してゆく。電池、トイレットペーパー、ミネラルウォーター、数え上げればきりがない。それでも、他の地方の人間たちは、そんな状況に耐え続けた。被災者たちは自分たちよりもずっと辛い思いをしているんだからと。  だけど、そんな状況が二ヶ月、三ヶ月と続く中で、不満を抱き始める人間も決して少なくはなかった。まして、経済的な打撃は地方にも当然のごとく押し寄せてくる。このままでは首都圏の没落に自分たちの住む地方まで引きずり込まれてしまうという危惧が、そういった人々の中に沸き上がったのは、しごく当然のことだったのだろう。  やがて、地方には、首都圏からの脱却を、すなわち、日本からの独立を説く者が少しずつ現れ始めた。そして、彼らに賛同する者たちが集い、一つの組織を作り上げた。それが僕の所属している組織『賛成派』だ。  とはいえ、一つの新しい考え方が生まれると、ごく自然に、それに反する考え方も生まれるというのが、この世界の流れだ。日本からの独立など許すまじと声を上げ始めた集団が、やがて『反対派』として結集していった。
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