After the Earthquake

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 それにしても、反対派は一体どうしてこんなタイミングでいきなり実力行使に出てきたのだろう。あまりにも突然すぎて、僕には上手く理解することができない。僕としては、全面的衝突はまだずっと先のことになると思っていた。正直に言うと、僕はまだ覚悟という覚悟はできていない。これから一体どうなるのだろうと考えると、ハンドルを握る手が不安で震えだす。もちろん、来るべき戦いのときには、先頭に立って戦うくらいのつもりではずっといた。だけど、それがいざ現実になってみると、頭で考えていたよりもずっと、心が揺り動かされる。  反対派が大阪駅を爆破した理由はわかっている。なにせ、大阪は賛成派の総本山だ。僕たち地下組織に限らず、表の世界でも日本からの独立を声高らかに叫ぶ人間はいらくでもいる。府知事すらも日本からの独立をちらつかせるような発言をする始末だ。そういう意味では、大阪駅は賛成派の集う大都市の中心駅だし、そこを爆破された時に賛成派が受ける衝撃は、決して小さなものではない。現に、僕だってひどく衝撃を受けているし、そのせいで自分でも想像ができないくらい動揺している。僕が反対派の立場だったら、間違いなく先制攻撃としては成功だと感じるだろう。ということは、賛成派の僕たちとしては、してやられたという感じは否めない。  そんなことを考えているうちに、ポイントT一六まであと一キロメートルの所まで差し迫っていた。車内の時計は午前一時を示している。予定よりも少し早いけれど、遅れるよりはずっとマシだ。僕はそのまま車を走らせる。信号機が黄色点滅になっているおかげで、車は信号で停まることもなくスムーズに目的地に向かって走り続ける。  僕はポイントから少し離れた場所にあるコインパーキングに車を停めた。僕の車以外に、二台の車が停まっている。一台は国産のファミリーカー。もう一台は、ドイツ製のセダンだ。どう考えても、僕の車が一番見劣りするだろうが、その分、これが僕の車だと気づかれる可能性も低くなるに違いない。  僕は車を降りる前にカバンの中を探った。そして、真っ黒なサングラスを取り出して、それをかけた。暗い中だと、サングラスをかけるだけで、人の印象はずいぶん変わってしまうものだ。下手に手の込んだ変装をするくらいなら、サングラス一つくらいに留めておく方が、変装としてはよほど効果的だ。
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