After the Earthquake

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 僕は自分に与えられたコードを伝えた。すると、最後列の席から、にゅっと白くて細い手が飛び出してくる。慌てて後ろを振り向くと、最後列の真ん中に座っている小柄な女性が僕の方に手を差し出していた。車内が暗くてよくわからないけれど、その女性はおそらく二十代前半、少なく見積もっても、僕より十歳は年下だろう。僕は彼女が何者だかわからないまま、差し出された手を握る。 「アタル、私がアーサーだ。よろしく頼む」  女性はそう言うと、僕が握った手にギュッと力を入れた。 「あなたがアーサー?」  僕は戸惑いながら尋ねた。僕を戸惑わせた何よりの理由は、アーサーが女性であることだ。少なくとも電話で話をしているときには、アーサーの声は男性のものだった。だから僕は、アーサーが男性なのだということを、今の今まで信じて疑わなかったのだ。 「驚いているね、アタル」 「え、ええ。まさか、アーサーが女性だなんて思っていなかったんで」  僕は自分の気持ちを正直に伝えた。すると、アーサーはフフッと小さく笑った。 「電話で話をするときには変声機を使っているからね。敵を欺くにはまず味方から。大事な格言だ」  アーサーのその言葉に、僕は小さく頷いた。それを確認すると、アーサーは僕の手を握っていた手の力を緩めて、ゆっくりと引き下げた。 「それでは、アタルにチーム・アーサーのメンバーを紹介する。まずはサブ・チーフのグレイだ」  アーサーがそう言うと、彼女の左隣に座っていた小太りの男が、無言で小さく頭を下げる。見たところ、年齢は僕と同じくらいだろうか。どこか陰気臭さが漂う感じの男だ。言葉は悪いかもしれないが、第一印象としては仕事ができなさそうという感じだ。僕の心の中にも、こんな奴がサブ・リーダーで大丈夫なのかという思いが過る。  だけど、そんな僕の思いとは関係なしに、メンバー紹介が続く。 「続いて、ケイトだ」  今度はアーサーの右隣に座っていたスラリとした美形の女性が頭を下げた。それに合わせて、艶のある黒く長い髪が、はらりと彼女の前に垂れる。その姿が、なんとも艶やかで僕は思わず魅了されてしまう。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、ケイトが僕の方に手を差し出してくる。僕はそっとケイトの手を握った。 「続いてケンだ」
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