After the Earthquake

8/150
前へ
/151ページ
次へ
 アーサーの言葉に合わせるように、僕の隣に座っている金髪の若い男性が頭を下げる。見た感じはチャラチャラとしているが、賛成派に所属している以上、しっかりとした信念があるのだろう。僕はケイトの手を握っていた手を離し、ケンの方に差し出す。すると、ケンは黙って、そして力強く僕の手を握った。ずいぶん手がゴツゴツしていることからするに、ケンは何らかのスポーツをしていたか、あるいは何らかの肉体労働系の仕事をしているに違いないと僕は思った。だけど、いちいちそんな詮索はしない。彼がどんな過去を送っていようと、現在どんな仕事をしていようと、目的を達成するためには大して関係のないことだ。  一通りのメンバー紹介が終わると、アーサーはメンバーの顔を見回した。 「さて、これから私たちは密会場へ向かう。おそらく、反対派に対する何らかの報復攻撃の指示が下るだろう。とはいえ、大阪支部だけでもチーム数はゆうに数千に上る。今回、私たちのチームに報復攻撃命令が下る可能性は限りなく低い。だからといって気を抜かないで欲しい。いずれ、私たちのチームにも間違いなく攻撃指示が下ることになる。最終的には全面戦争になるだろうからな」  アーサーが言い終えると、一同は小さく頷いた。もちろん、僕も頷いた。それと同時に、僕は少し安堵していた。いきなり攻撃指示なんて下されても、僕にはどうすればいいのかわからない。僕は賛成派に所属しているとはいえ、これまでごく普通のサラリーマンとして過ごしてきたのだ。格闘技の経験だってないし、まして、武器の扱い方なんてわかりもしない。  他のメンバーはどうなのだろうと思って見回すと、グレイは僕と同じように、明らかに安堵の表情を浮かべている。サブ・チーフという肩書きこそ与えてあるけれど、おそらく彼も僕と同じように、まだ十分な覚悟ができていないのだろう。その一方で、ケイトとケンは明らかに不満そうな表情を浮かべている。彼女と彼は、今にでも反対派に飛び掛かっていきたいとでもいうかのような、ひどく好戦的なオーラを纏っている。あるいは、彼女と彼にとって、日本からの独立などという目的はたいして意味を持たず、ただ戦うということだけが重要なのかもしれない。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加