After the Earthquake

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「ああ、いろいろとあってな。僕はもう賛成派には戻れなくなってしまった」 「そうか。ところで、後ろにいるその女性は?」  女はクロエの方を指さしながら言う。 「彼女は君たちと同じ反対派のメンバーさ。他の賛成派のチームが捕らえて、僕たちのチームで拘束していた。だけど、放っておけば殺されることになる。だから、ここに連れて来た。同じ反対派のメンバーなんだ。助けてやってもいいだろう?」  僕の言葉に、女はクロエの頭のてっぺんから足の爪先まで舐めまわすように見ると、 「ふんっ、まあいいわ。そもそも、今日この時間にここにくれば助けると言ったのは私の方だからね。助けるのが一人になろうが二人になろうが、たいした違いはないわ」 「恩にきるよ」  僕はそう言って、女に向かって微笑んだ。それに応えるかのように、女も僕に向かって微笑んだ。 「とりあえず、いつまでもここにいるわけにはいかないわ。いつお前たちの追手が来るともわからないからね。とりあえず車に乗りなさい。話はそれからよ。お前の車はここに置いていくことになるし、もう二度と戻ってこないかもしれないけど、異議はないわね?」  僕は女の問いに、黙って頷いた。それを確認すると、女はトラックの方に向かって歩き始める。その後を、二人の男がついて行く。僕たちはその後を追った。  トラックの荷台は、電気が点くように改造されていて、床にはカーペットが敷いてあり、ゆったりとしたソファまで置いてある。まず女が荷台に乗り込み、続いて僕とクロエが乗り込む。そして、二人の男が乗り込んで扉を閉めた。最後に、ガチャリと外側から扉がロックされる音が聞こえてきた。おそらく、運転手が降りてきて、扉をロックしたのだろう。  女は一番奥のソファにどっかりと腰を下ろした。それから、男たちも腰を下ろす。どうしていいかわからず僕たちが立ち尽くしていると、 「とりあえず、適当に座りなさい」  と女が言った。僕たちはその言葉に従って、適当な場所に腰を下ろす。すると、それと殆ど同時に、トラックがゆっくりと動き始めた。  トラックが動き始めてしばらくは、誰も口を開かなかった。ただ、重苦しい沈黙だけが、荷台の中を覆いつくしていた。そんな沈黙を破ったのはクロエだった。 「ところで、あなたのお名前はなんとお呼びしたらいいですか?」  クロエは女に尋ねた。
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