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「私? 私の名前はアメリー。お前の名前は?」
「クロエ」
クロエがそう答えると、男の一人がノートパソコンを取り出し、カチャカチャとキーボードを叩く。そして、男はパソコンのモニターをアメリーに見せた。そして、アメリーはモニターを眺めながら言う。
「クロエ。本名、黒川絵美、二十七歳。賛成派名古屋本部所属。リーダー・ボブ配下」
クロエは驚いたのか、口を大きく開けて、動きを止めている。そして、しばらく目をパチパチとしながら、アメリーを見つめる。
「クロエ、どうした?」
アメリーが尋ねる。それでようやくクロエは正気に戻った様子で、アメリーに尋ね返す。
「アメリーさん、あなたはいったい何者なんですか?」
「どういうこと?」
アメリーがクロエの質問に答える前に、僕は思わず口を挟んだ。そんな僕の質問にクロエが答える。
「だって、私の本名も年齢も所属も知ってるなんて。ふつう、リーダークラスじゃあり得ない」
クロエの言葉に僕はハッとなる。賛成派と反対派とで全く同じということはないだろうが、たしかに賛成派でもチーフクラスはそんな情報を持っていない。おそらくアーサーだって、僕の本名や年齢は知らない。
「もしかして、アメリーさんはかなり上の幹部の方ですか?」
クロエが尋ねる。
「立場は明かせないわ。好きに捉えてもらって結構よ」
「わかりました。ところで、これからどこに向かうんですか?」
「私たちの特別基地に向かうわよ」
「特別基地? そんなものがあるんですか?」
「これ以上は答えられないわ」
アメリーは少しきつめの目でクロエを見る。クロエは恐縮した様子で口を噤んだ。だけど彼女はすぐに別の質問を繰り出す。
「あの、私はリーダー・ボブのチームに戻って働かなくていいんでしょうか?」
「お前はとりあえず、特別基地で保護するわ。それ以上のことは話せない」
アメリーの言葉に、クロエは小さく頷いた。心なしか、クロエの表情には安堵の色が見える。もしかしてチームに戻りたくないのだろうか。クロエはチームの中でうまくいってなかったのだろうかと、勝手に勘ぐってしまう。それを尋ねてみようと、僕が喉元まで言葉を出しかけたその時、一瞬早くアメリーがクロエに言葉を投げかけた。
「チームで何かあったのかしら?」
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