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その問いに、クロエの表情が翳る。話すべきか話さないべきか悩んでいるように僕には見える。クロエは黙って俯いた。ゆっくりとアメリーの眉間に皺が寄っていくが、クロエはそれを見ていない。そして、クロエは、
「実は」
と、ぽつりと呟いた。
「話してみたらどうかしら? ここで話したことは一切口外しないから大丈夫」
その言葉に、クロエは意を決したように顔を上げ、真っ直ぐにアメリーを見据える。
「実は、身体を求められました。初めて秘密基地に集合したその日、リーダー・ボブから」
「それに応じたの?」
「応じていません。そもそも、私はそんなことをするために反対派に入ったわけじゃありません。私には信念があって反対派に入ったんです。そんなこと、できるはずもありません」
「だったら、それで問題はないんじゃないかしら?」
「だけど、リーダー・ボブはそれで引き下がりませんでした。ご存知かもしれませんが、私たちのチームは男四人と私一人です。リーダー・ボブは他の三人に命じて、私を抑え込ませて、むりやり犯そうとしたんです」
「最低な男ね」
アメリーは小さくため息を吐いた。そして、同情するような視線をクロエに向ける。そういえば、アメリーは僕を脅すときにも性器を切り落とそうとしていた。カバンから出てきた瓶の中には、切り取られた性器が浮かんでいた。もしかすると、アメリーも男性からそういった類の被害を受けたことがあるのかもしれないと僕は思った。だけど、今はそれを確認するような雰囲気でもない。僕は黙ったまま二人の様子を見つめる。
「それで、結局、それで何もなかったのかしら?」
アメリーがクロエに尋ねた。だけど、クロエはゆっくりと首を横に振った。何かを思い出したのか、少し目が涙ぐんでいるように見える。
「犯されはしませんでした。私も必死に抵抗しましたし、リーダー・ボブだってそんなことが本部の耳にでも入ったら困ることになるのでしょう。だけど、私は交換条件を突き付けられました」
「交換条件?」
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