After the Earthquake

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 クロエはすべて話したことで気分がすっきりとしたのか、手の甲で涙を拭い、ようやく笑顔を見せた。その笑顔に、アメリーも僕も笑顔で応えてみせた。  時刻は午前五時を回っている。車が走り出して、すでに二時間が経過している。アメリーたちの特別基地がどこにあるのかなど、僕が知るはずもない。そこまで、いったいどれくらいの時間がかかるのかもわからない。僕は時刻が刻々と過ぎていくのを待つ。クロエは疲れてしまったのか、いつの間にか眠りに落ちて、小さな寝息を立てている。仲間に保護されたという安心感もあるのだろう。だけど、敵である反対派に囲まれている僕の緊張感は決して消えることはない。ずいぶん長い時間眠っていないせいで、僕も疲れているし、眠気だって襲ってくる。だけど、今僕が置かれた状況から考えると、眠っている間に殺されてもおかしくはない。決して気を許して眠ってしまったりすることなどできないのだ。 「少し眠ったらどうかしら?」  アメリーが僕の気持ちを見透かしたかのように声をかけてくる。 「大丈夫。それよりも、あとどれくらいで特別基地とやらに着く?」  僕の問いに、アメリーは腕時計を確認してから、 「あと三十分くらいかしら」  と答えた。その答えで、僕の気分はずいぶん楽になった。いつまで耐えればいいのかわからない状況に比べて、時間が区切られるというのがこんなにも心に安らぎを与えてくれるものだとは知らなかった。それに、あと三十分くらいだったら耐えることができる。もっとも、特別基地に着いたところで、僕がゆっくりと休むことができる保証なんてどこにもない。それでも、今の僕には十分だった。  アメリーが僕の問いに答えてちょうど三十分が経とうとしたとき、トラックがゆっくりと停車し、エンジンが切れた。どうやら特別基地に到着したらしいということは、僕にもすぐに分かった。僕は隣で眠るクロエの肩を揺らし、 「着いたみたいだ」  と声をかけて起こした。クロエはまだ眠いのか、寝ぼけ眼を手で擦りながら、ゆっくりと目を開ける。僕たちがそんなことをしている間にも、アメリーたちは立ち上がり、車から降りる準備を整えている。そして、アメリーは僕たちの前に立つと、カバンから何かを取り出す。僕はアメリーのその行動に思わず身構える。何が出てくるかなどわかったものではない。いつでも警戒は怠らないようにしなければならない。
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