After the Earthquake

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 アメリーが僕たちの前に差し出したのは、金属製の手錠だった。どうやら僕に手錠を嵌めるらしい。それも仕方のないことだと僕は思った。いくら助けるといっても、彼女たちから見れば僕はあくまで敵だ。いつ反旗を翻すかもしれないと疑われるのは至極当然のことだ。僕が逆の立場でも同じようにするに違いない。僕は手錠をかけやすいように、素直に両手を前に差し出した。すると、アメリーは僕の左手首にだけ手錠をかけ、それからゆっくりと優しくクロエの右手を取る。 「悪いけど、お前にはこの男の見張り役になってもらうわ」  アメリーはそう言うと、片方を僕の左手首に繋いだ手錠を、クロエの右手首にかけた。クロエは手錠をかけられたことに一瞬戸惑っているようだったが、それを自分の任務と思い直したのか、表情をキリッと引き締まらせて頷いた。  車を降りた僕たちは、特別基地の中に入る。扉の先には長くて真っ直ぐな廊下が続いている。カツカツ、カツカツと、静かな廊下に僕たちの足音が響き渡る。雑談でもしながら歩くのなら僕の緊張も少しはほぐれるのかもしれないが、決してそんな雰囲気でもない。クロエも自分に任務が与えられたせいか、これまでよりずっと自信に満ちた表情で、胸を張って歩いている。僕は急に心細くなった。本当にこれでよかったのかと、思わず自分に問いかけてしまう。だけど、正しい答えなんてわかるはずもない。それに、たとえ間違っていたとしても、今さらどうすることもできない。まさか、クロエの手を引きちぎって逃げ出すわけにもいかない。
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