After the Earthquake

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 アメリーは廊下を突き当たりまで歩くと右に曲がった。すると、僕たちの目の前に鉄製の扉が立ちはだかる。アメリーが鍵の束を取り出して、その扉を解錠すると、ガチャリという冷たい金属音が辺りに響き渡った。アメリーはドアノブに手をかけてゆっくりと扉を開ける。すると、隙間から一際ひんやりと冷たい空気が流れ出してくる。少し気味悪さを感じるような類の冷たさだ。そして、アメリーが完全に扉を開けきると、今度は僕たちの前に鉄格子が立ちはだかった。まるで監獄のようだなと僕は思った。もっとも僕は本当の監獄になんて入ったことはない。あくまでもドラマなどで見たイメージでの話でしかない。鉄格子の向こうには、また長い廊下が続いている。アメリーは鉄格子の扉も解錠して、廊下を歩き始める。僕たちはその後をついて歩く。僕が逃げ出すのを防ぐためか、男たちは僕たちの後ろにぴったりとついて来る。  廊下の両側には鉄製の扉が並んでいる。部屋番号などが付けられている様子はない。この鉄製の扉が鉄格子だったら、本当に監獄そのものなのかもしれない。僕は思わずキョロキョロと左右を見回しながら歩く。あまりにも独特な雰囲気を醸し出す空間に、僕はどうしても落ち着くことができない。一方のクロエは、見る限り落ち着きはらっている。全くの第三者がこの状態を見れば、僕はたった一人監獄へと送られる囚人のように見えるに違いない。  やがてアメリーは一つの扉の前で立ち止まった。そして、再び鍵の束を取り出し、その扉を解錠した。それから扉を完全に開けると、 「入りなさい」  と僕に命じた。一瞬、僕は躊躇ったが、先に一歩を踏み出したクロエに引っ張られるような形でその部屋の中に入った。部屋は六畳くらいの広さで、床にはカーペットが敷いてあり、簡素なベッドが二つ置いてある。それ以外に、特に物はない。テレビなどの家電製品といったものは一切見当たらない。部屋の隅の方に小さな木製の扉があるのが見えるが、その中がどうなっているのかはわからない。  僕とクロエが完全に部屋の中に入ると、アメリーが部屋の中に入ってきて、男二人を残して扉を閉めた。 「お前たちにはしばらくこの部屋で過ごしてもらう」  アメリーは一方的に僕たちに宣言した。その言葉に、クロエが首を傾げる。 「私もこの部屋で過ごすんですか?」 「そうよ。あなたはこの部屋で保護するわよ」 「どうしてですか?」
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