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クロエは納得がいかなさそうな表情を浮かべて、アメリーに食って掛かる。クロエとしては、これからも何らかの任務に就かせてもらえるものだと思っていたのかもしれない。それが、こんな部屋に僕と一緒に監禁されると知らされ、混乱してしまっているのだろう。だけど、アメリーはフッと小さく笑いながらクロエに語りかける。
「いいかしら。お前にはこの部屋で、この男が逃げ出さないように見張ってもらうわ」
その言葉に、クロエの表情が和らぐ。そういうことだったのかと納得した様子だ。だけど、男の僕と二人きりでこんな部屋に閉じ込められることに不安はないのだろうか。僕は決して彼女を襲うようなことをするつもりはない。だけど、彼女は自分のチームで犯されそうになったのだ。そして、僕たちのチームに捕らえられてからもケンに犯されそうになった。これまでのことを考えると、不安を抱かないのは無理であるような気もする。それでも任務だというそのことが彼女の背中を押すのだろうか。彼女は迷いのないような表情を浮かべている。
「もしも襲われそうになったら、あの非常ボタンを押すといいわ」
アメリーはそう言って、壁の一点を指さす。そこには、小さなボタンのようなものが見てとれる。どうやらそれが非常ボタンのようだった。もちろん、クロエがそれを押すことはないだろうが。
それだけ説明し終えると、アメリーは僕とクロエを繋ぐ手錠を外した。そして、最後に少しだけ説明を加える。
「食事は一日に三度、この部屋に運ばれるから。それと、トイレとお風呂は奥の扉の中よ。必要なものがあったら、食事を運んでくる担当者に伝えてくれればいいわ」
アメリーはそれだけ言い残すと、部屋を出ていった。すぐに外から扉に鍵がかけられる音が聞こえてくる。そして、カツカツという足音が響き始め、それがどんどん遠のいていく。足音が聞こえなくなった瞬間、僕はようやく緊張の糸が切れて、ベッドに倒れこんだ。
「悪いけど、少し眠ってもいいかな?」
僕はクロエに尋ねた。
「もちろん。私もずいぶん疲れたし、まだ眠いもの。私も寝るわ」
クロエもそう言うと、ベッドに横たわる。
「じゃあ、おやすみ」
僕は最後にそう声をかけて目を閉じた。そして、そのままあっという間に眠りに落ちた。
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