After the Earthquake

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 目が覚めたのは正午より少し前だった。ぐっすりと眠ったおかげで、ずいぶん身体は楽になっている。ふと隣のベッドを見てみると、クロエの姿が見えない。いったいどこに行ったのだろうと思っていると、奥の扉の方から水の流れる音が聞こえてくる。どうやらクロエはシャワーを浴びているらしかった。僕はベッドに腰かけて、ぼんやりと彼女が出てくるのを待つ。  それから五分ほどして、クロエが奥の扉から姿を現した。黒く長い髪が濡れて、光に照らされてきらきらと輝いている。彼女は濡れた髪をバスタオルで拭きながら、自分のベッドに腰を下ろす。 「アタルさん、起きてたの?」 「うん、起きたばかりだよ。ゆっくり休んだおかげで、ずいぶん楽になったよ」 「うん、私も。久しぶりにこんなにゆっくり眠った気がするわ」  クロエはそう言った。彼女の場合、たしかにそうかもしれない。彼女たちの秘密基地で眠っていても、いつチームのメンバーに襲われるかわからない状態だったのだから、安心して熟睡などできなかったに違いない。あんな経験をしたにも関わらず、僕と二人きりでもこれほど落ち着いていて、安心して眠れるということは、それなりに僕に対して心を許してくれているのかもしれない。そうだとすれば、僕としても嬉しいものだ。 「アタルさんもシャワーを浴びてきたら? すっきりするわよ」  クロエが僕に勧めてくれる。 「ありがとう。そうだな、あとでゆっくり浴びてくるよ。それよりも、多分もう少しで昼食だろう? アメリーの言うとおりなら、一日三回、食事が運ばれてくるはずだから」  僕がそう言ったそのとき、誰かが部屋の扉をノックした。 「はい」  と、クロエが答えて、扉に近寄る。すると、カチャリと扉が解錠される音が響き、ゆっくりと扉が開いた。姿を現したのは、メイド服姿の若い女性だった。女性はクロエに総菜パンを四つと、紙パックのジュースを二つ渡す。それだけの作業を終えると、黙ったまま部屋を出ていった。そして、再び扉が施錠される音が部屋の中に響いた。  昼食を受け取ったクロエは、そのまま僕の方に寄ってくる。そして、受け取ったパンとジュースを僕に見せてくれた。 「先に好きなのを選んでもらっていいよ」
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