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映画が終わり、その結末からひどく落ち着いた雰囲気となると、俺は彼女に引き連れられ寝室へと入った。
「はぁ……」
寝室に入った俺は目を見開き、感嘆の声を洩らさずにはいられなかった。
「これは」
「そうです。
チャイニーズシアターにあるアレが、モチーフになっています」
俺の問い掛けに、彼女は即座に答えてくれた。
余程の映画好きなのか、壁にはハリウッドのチャイニーズシアターの歩道に埋め込まれているような足形のレリーフが、ズラリと並んでいた。
数こそ5つと少ないのだが、その存在感は俺を含む初見の者にインパクトを与えるには十分なモノであろう。
「何か飲みます?」
こういった情事を度々おこなっているのか、彼女は慣れた様子でベッド脇にあるミニ冷蔵庫を開けると、尋ねてくる。
「じゃあ、ビールを」
レリーフを見つめながら俺が答えると、彼女は缶ビールをグラスに注ぎ、俺の前にあるミニテーブルの上に置いた。
「あのレリーフ、ドコで買ったの?」
「秘密です」
彼女はウインクをすると、自らは缶チューハイをグラスに注がず、缶のまま一口飲んだ。
ぷっくりと膨らんだ彼女の唇が、俺の性欲を激しく掻き立てる。
が、俺はそれを表には出さず、彼女に続いてビールを飲むと、作曲家の肖像画のように並べられている壁のレリーフに視線を移した。
「私、小さい頃はいじめられっ子だったんですね……」
一体、どういった意図からなのだろうか。
彼女はミニテーブルの上で指を組むと、うつむき加減の状態で滔々と語り始めた。
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