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「原因は、太っていたからです。
小学生だっていうのに、その時の私の体重は98キロもありましたから。
男子には、よくいじめられましたよ。
『とんこつラーメン!』とか言って、上から給食のラーメンをかけられたりとか。
『バリア!』って言って、一人の子が後ろに隠れると、前からその子の友達の何人かがドッジボールをぶつけてきたりとか」
「へぇ」
「で、私。
痩せようと決意したんです。
痩せて、綺麗になって、私をバカにしている全ての男を見返してやろうと思って」
「で、今の綺麗なマチコさんが出来上がった、って訳か」
俺は口角を上げ、缶ビールを飲み干す。
彼女は俺からグラスを引き取ると、2本目の缶ビールを開け、わざわざ新しいグラスにそのビールを注いでくれた。
「痩せて、綺麗になってからは、私を見る男性の目がガラリと変わりました。
『ブタ』とか『ブス』とか言っていたのが、まるで嘘みたいに。
正直、この手のひら返しにはビックリしましたよ。
痩せて、メイクを覚えるだけで男の人ってこんなに態度を変えるのか、って」
「同じ男として、それを言われるとツラいモノがあるな」
彼女の告白に、俺はただ苦笑するしかなかった。
「だから、私。こうも考えました。
かつて、自分をいじめていた男たちを見返すだけじゃなく、1人ずつ見つけ出して復讐をしてやろうって。
あの当時の男子は、こっちが自殺を考えるくらい私の事をいじめてきましたからね。
復讐を実行するのは、簡単でした。
男の人って、見た目が良ければ恋愛感情抜きですぐに女に飛び付く生き物ですから」
彼女は、口裂け女みたくいびつに口角を上げると、続けて言った。
「私が復讐をしたい、と思っている男の子は6人です。
あの、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』みたいな悲しい結末を、その6人に対して味わわせてやりたいんです」
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