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彼女の言葉で急速に心胆が冷えきってきた俺は、すぐさま立ち上がり、壁に掛けられているレリーフに目をやった。
すると、さっきは気付かなかったのだが、レリーフの右下には俺の小学校時代の同級生の名前が、小さな文字で彫られていた。
「お前……、もしかして小野寺幸子か?
『とんこつラーメン』の?」
俺は声を震わせながら、目の前の「マチコ」と自称する女に問い掛けた。
「やった方は覚えていないんでしょうけど、やられた方は一生覚えているんですよ!」
彼女は俺の問い掛けには答えず、髪を振り乱して立ち上がると、ベッド下に隠していた包丁を俺に対して向けた。
「だから、アンタを除く5人に復讐して、その記念に足跡をああいうレリーフって形で残した!
でも、アンタだけはどうしても見つからなかった!
アンタ、お父さんの仕事の関係ですぐに引っ越す子だったしね!
だから、あの駅でアンタを見かけた時は動揺を隠すので必死だったよ!
どうやって、アンタに近づいて、この部屋まで連れてこようかな、って!
つーか、3ヶ月だけしかこの街にいなかったっていうのに、私の事をすぐにいじめてくるとかアンタどこまで性格が腐ってんの?
転校してすぐの子にまでいじめられる、あの時の私の気持ちがどんなだったか、アンタに理解出来る?」
「違う。アレはあの時の同級生にそそのかされて、俺は仕方なく……」
「言い訳なんか、聞きたくないんだよ!」
彼女は完全に聞く耳を持たない状態となっており、俺は隙を見つけ、どうにかしてこの部屋から逃げ出そうと考えた。
しかし、どういう事だろうか。
俺の全身は突如震え始め、挙げ句の果てにはひどい腹痛と胸焼けにより、立っていられなくなったのだ。
「お前……、一体、何をした……」
すっかりとうずくまった俺は、立ったままでいる彼女を歪んだ視界で見つめながら問い掛ける。
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