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「すみません、少々騒がしかったですよね。常連さんでして」
青年が申し訳なさそうな顔でカウンターへ戻ってきた。店内はまた、私と青年の二人だけになる。カウンターに戻った青年は、私のカップが減っているのを見るとおかわりを用意してくれた。本当に隙なくスマートだ。このくらい気が使える人が職場にもいれば、なんて今夜何度目か知れないことを思ってしまう。
「あの、さっきのお客さん、お会計って……?」
ほかに人がいないのをいいことに、思い切って尋ねてみる。
「ああ、あの方からは前払いですでに一生分いただいているんですよ」
そういって青年はカウンターの端に置かれている小さな火が入った瓶を指さす。
「あれを、譲っていただいたんです」
「火、ですか?」
「まあそうですね。でも、私にとってはこの上なく大切な灯なんですよ」
瓶の中の火へ視線を向ける青年は、愛しいものを見つめる目をしていた。
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