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パソコンを開く。さぁ勉強会の準備だ!
あと二日、脳に糖分は必須。
某チョコのパイにチーズのおかき、室温のお茶と、室温のジュースの一人用ボトル。
「姉貴、それじゃポテチ食わなくても意味ねえぞ。またズボン入んなくなったとか言うなよ」
「オッケ~イ」
「何言ってんだか」
あたしが広げたお菓子の中から好物を二個掴み、弟は部屋に引っ込んだ。
摂りすぎたカロリーは後で落とせばいいさ。
時が来た。我が愛しき盟友は集う。ところで盟友って何?
「やっほー」
こういう時ってやっぱ、まず手振っちゃうよね。
みんなも両手をひらひらさせている。
『ワーお菓子いっぱいだぁ。太るよ~、でもおいしそう~』
香菜がふんわりと言う。
「あれ? 弥七がいるね」
柴犬の弥七が、香菜のベッドに寝そべっていた。
『そうなの~。明日雨でしょ?そういう時は入れてあげたりするの。お風呂も手伝ったんだよ~』
『きゃ~やっくんかわい~』
真由美と千夏も大喜びだ。
「真由美、トラミは?」
『ここ』
真由美のひざ掛けに入ったシロキジ猫のトラミが、真顔で画面に顔を出す。
最高~!
いいな~。こういうのを見ると、ペット欲しいな~って思ってしまう。
『はい! 始めよう』
吹っ切るように千夏が言う。
勉強会は存外に楽しかった。
ついに最終日。
あたしはパソコンの前で、みんなと声を合わせて文の一節を憶えようとしていた。と、
「ん?」
何か‥‥‥
おかきを口に入れようとしてちょっと視線をそらした時、目の端に何か。
一瞬の違和感のようなもの。
何だ?
パソコンを凝視する。
「香菜? ‥‥‥」
香菜以外のメンツもみんな固まっている。
『え? ちょっと何?おーい』
香菜だけが一人気づかずしゃべっている。
香菜‥‥‥後ろ。
‥‥‥いる。
いるよね? ‥‥‥あたし達は目配せした。
香菜のベッドに、知らない男が座っている。
ピクリとも動かず、無表情で香菜を見ている。
香菜は一人っ子だし、親父さんの顔も知ってる。誰こいつ?
弥七‼弥七はどこ行った!? なぜ吠えないっ‼
手探りで携帯を引き寄せ、110を押そうとした。が、
「チッ!」
イライラしながら落とした携帯を拾おうと屈み、愕然とした。
まだなんか、いる?
画面のずっと下の方、何かがもぞもぞ動いている。
弥七の影かと思ったが、毛玉というよりめかぶみたいな巨大な塊が、ずるりと香菜に向かって来ていた。
香菜! まずいよ香菜!
「香菜。花瓶持って」
『え?』
「とにかくそこのオシャレな花瓶持って、早く!」
『ちょっとやだ何~?』
『後ろ見ない‼』
真由美が鋭く言った。
『私達が1、2、3って言ったらそれぶん回して』
千夏が続いた。
『ねぇ~何~?』
香菜は半泣きで聞いてくる。
「いくよ! 1!」
『2!』
さーーんと叫ぼうとした時、男が立ち上がった。
香菜に近づき、一気に得物を突き立てる。
ぁぁぁぁぁぁぁっ
叫んでいるつもりなのに、誰も声が出なかった。
やら‥‥‥れ‥‥‥た?
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