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「わっ大盛り!」
初めて入った店。
カウンターに座ってビールと枝豆を頼んだ後、久々に食べたくなって頼んだポテトサラダはこんもりとお皿に山盛りで、思わず声が出た。
店長らしき人がお皿を差し出して「お嬢さん1人には多かったかな?」と笑う。
すると、私がお皿を受け取る前に右隣に座っていたスーツの男が突然話しかけてきた。
「ここの店、全部量多めだよ。店長太っ腹だから。半分こしよ?」
「えっ?」
急な提案に驚く私をよそに
「店長、取り皿1つ。あとこのポテサラ、お会計は俺につけといて。」
そう言うと彼は返事も聞かずにお皿を受け取り、綺麗に半分にして私に寄越した。
「あ、ありがとうございます!」
口ではそう言ったものの、内心こんな風に距離感の近い人間は苦手だった。
男は目を細めて笑った。
「ありがとうって言いながら、本当はちょっと嫌な事、隠すの上手だね。ごめんないきなり。」
ヘラっとしていて柔らかい雰囲気なのに、意外と鋭い事を言う人だ。
「いえ‥」
「君、レモンサワー好き?ここのレモンサワー、なーんか美味しいんだよ。2杯目に良かったら飲んでみて。」
そんな風にしてペースを掴まれた私は、人見知りが嘘の様に、いつの間にか全ての料理を半分こしていた。
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