足跡相性相談所

『久しぶり！元気？報告があります。私、結婚することになりました！式は未定ですがぜひ来てください』
『もう28歳なんだから、淳も早くいい人見つけて。報告まってます♡』
　久しぶりに来た友人からのライン。食事の誘いを期待して心が躍ったのはわずかな間だけだった。
『サツミ久しぶり。結婚おめでとう！式行けるの楽しみにしてるね！』
無難な言葉を送信。めでたいがこういう報告が来る度に皆から置いていかれているようで気が滅入る。
ふと顔をあげ、窓に映る自分の姿に焦点を当てる。仕事に疲れてはいるけど、すっきりした素朴な印象。この百八十近い身長がなければ、顔も性格もいいんだから絶対もてるよ！とサツミは言っていたけれど、男性はあまり得意じゃない。付き合うとどうしても肉体関係の心配もあるし、親しくなるほど怖くなる。だから付き合っても三カ月ともたない。でも結婚はしたい。
私にとって結婚は幸せの象徴だ。お互い支えあえる仲良し夫婦にかわいい子供。仕事に趣味に忙しくて毎日笑って。実家みたいに暖かい家庭が持ちたい。小さい頃からの私の夢。難しいと分かっていても、相手ができた時のために貯金もしているのに。周りに迷惑ばかりかけてきた私には幸せになるチャンスすらないのだろうか。
またメッセージが来た。見たい気分じゃないと思ったけど何かのアドレスのよう。画面を開くと下には
『足跡相性相談所　ＨＰはこちらから』
『私と彼はここで出会いました！余計なお世話かもしれないけど(笑)』
　とサツミ。確かに余計なお世話だとちらりと思ったが、内容に興味をひかれた。
　HPを開いてみると、『二人の出会いを　人生から見つけます』と男女が寄り添って笑っている写真が出てきた。と思うと数人が笑いあっている写真が出てきて『気の合う仲間も　その足跡から』次に女性同士ドレスで向き合っている写真。『悩みがある方も歓迎致します』
なんだこれ。サツミ騙されたんじゃないのか？なんでも足跡を元に解析、マッチングするんだそうだ。
　ばからしい。それで出会う相手なんて歩幅と速度が合う人だけという理性と悩みのある方も歓迎という魅力的な謳い文句。その間でぐらぐら揺れながら仕事を片した。