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帰り道。いつもなら気にならない他人の足音がこうも気になるのは、他ならないあのラインのせいだ。嫌になって足音を避けるように路地に入る。
入った瞬間、「足跡相性相談所」という看板が眼に飛び込んできた。気にしすぎて目までおかしくなったのだろうか。私は慌ててHPを見直す。住所はここで間違いない。ここまでくれば、もう行けという神様からのお告げではないのか?
逡巡したが、思い切って一歩踏み出した。
「こんにちは」
清潔な白い館内に入ると緊張でがちがちの私に受付嬢がにこやかに声をかけた。
「こ、こんにちは」
「ご予約されてますか?」
「あ、すみません…たまたま通りかかって」
「いえいえ。そういうお客様も多いですし、丁度ご予約のない時間ですのでお客様はラッキーです。本日登録していかれますか?」
「はぁ」
「でしたらあちらの部屋でこのカードに基本情報の登録をお願いします。終わりましたらそのままお待ち下さい」
煮え切らない返事の私に、それでもお姉さんは笑顔のままICカードを手渡した。
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