第一話 転校生

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第一話 転校生

物心つく頃から体に違和感を感じていた。自分を男だと思っていた。その違和感は、年を重ねるごとに消えることなく増していった。そして、小学校に入学してすぐに、自分は男じゃないことを思い知った。 初めはそれでも、自分に足りない物は後から生えてくる物なんだと言い聞かせていた。だけど、どれだけ待ってもそれは自分の体には生えてこない。その事が自分に悲しみを与えて感情が邪魔だと思えてきた。 だから、感情は表に出さないように生活するようになった。そしたらいつの間にか、周りの人間がどんどん離れていき、自分の心の中に自然と大きな壁が出来て、自分自身を守るようになっていた。 服装も、男とも女ともとれるようなものになり、高校も制服がない所を選んだ。 高校生活一年目の時は、こんな自分に話しかけてきてくれる人はたくさんいたれけど、自分が気がついた頃には話しかけにくい、なんか変だと離れていった。 そして高校二年生になったある日。いつものように教室に入ると、今まで騒がしかった教室が自分を避けるように少し静かになった。それを気にしないふりをして自分の席に座る。そして変わりばえのない、ホームルームが始まり、担任の山田が話し始める。 「ええ、今日は転校生を紹介する」 担任の山田の言葉にクラスの人達が騒ぎ始める。 「誰、男、女。巨乳?」 クラスの男がそう言うと他の人達が、何言ってるのぉと言って笑い始めた。そんな会話をくだらないと思いながら聞いていた。 「はいはい、黙れ黙れ。空風、入れ」 担任の山田がそう言うと顔が整っているいかにもモテそうな男が入ってきた。 「空風、自己紹介して」 担任の山田に言われて空風という男は自己紹介を始めた。 「空風和也です。高校生活を充実したものしたいので、仲良くして下さい」 空風はそう言うと笑顔を振りまいた。 「みんな、宜しくな。じゃあ空風、お前の席は、そうだな。高原の前が空いているからそこな」 「はい、わかりました」 空風はそう言うと僕の前の席に座り、隣と前の人に軽く挨拶をして僕にも挨拶をしてきた。僕は、どうせそのうちこいつも離れていくんだから返さなくても良いやとあえて無視をした。 「なんだよ、感じ悪りいな」 空風はそう言うと軽く舌打ちをした。それからホームルームは終わり授業はあっという間に過ぎて昼休みになった。僕は大音量で音楽を流し人の声を遮るように聴いていた。 ー続くー
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