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第四話 告白
次の日、学校に行き、校門につくと多分上級生の男の人が僕の前に立った。
「あの、すみませんがそこをどいてもらえませんか?」
「…え、あ」
僕がそう言うとその男の人は顔を赤くした。
「…君さ、高原秋ちゃんだよね。俺、坂本俊って言うんだ。あのさ、実は、俺、高原さんのこと好きなんだ。君がこの高校に入学してきたときに一目惚れだった。だから、その、良かったら俺と付き合ってくれないかな」
照れくさそうに坂本先輩は言うとこめかみを軽く掻いた。
「返事は今すぐじゃなくて良いんだ。ただ、俺が好きだって言うことを知って欲しくて」
「…わかりました。私で良ければ」
あまり悩むことはしなかった。僕はこれで変われるかもしれない。体の違和感とか、そんな事がどうでも良くなるかもしれない。母を安心させてあげられる。
正直、もう疲れただけかもしれない。自分が男とか女とかそんな事にいつまでも囚われて周りから見れば、僕はただの女でしかないのに。だからいっそのこと、自分を好きだと言ってくれているこの人を好きになってみるのも良いのかもしれない。
返事を聞いて喜ぶ坂本先輩を見ながらそんな事を考えていた。
「高原さん、付き合えると思ってなかったから、凄く嬉しいよ。あ、そうだ。これからは高原さんのこと、あっちゃんって呼んでも良いかな」
「良いですよ」
坂本先輩はよしっと言って喜んでいた。そんな坂本先輩を見ていると、自分も少し嬉しくなっているのを感じていた。
「じゃあ、今日から一緒に帰ろう。放課後に教室に迎えに行くから待ってて」
「わかりました」
坂本先輩はそう言うと僕を教室まで送り届けて階段を上っていった。
「おはよ、ああねみい。秋、さっきの誰だ?」
席に着くと眠たそうにあくびをしながら和也が近寄ってきてそうきいてきた。
「あれね、私の今日出来たばかりの彼氏」
僕はなるべく嬉しそうに顔を作りながらそう言った。
「そうなんか。良かったじゃん」
和也はそれ以上何も言わずに自分の席に僕の方を向きながら座った。
「朝、いきなり告られてびっくりしたよ。一目惚れだってさ」
「ほお、そりゃあすげえな」
その後も和也は僕の話すことに少し相づちをして聞いてくれていた。
ー続くー
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