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第六話 贈り物
次の日、学校に向かい和也に挨拶をする。
「おはよ。秋さん、ちょっとお願いがあるのだけど」
「いやいや、今更なんつう話し方をしてんすか、和也くん。気持ち悪い」
和也が突然、変な話し方をしてきたから驚いてそんな事を言ってしまった。
「気持ち悪いってひでえな。まあいいや。確かにきもいわ。それは置いておいて。あのさ、今日、一緒に買い物に付き合ってくれないか」
「良いけど何買うのさ?」
僕がそうきくと和也は、静波さんが今度誕生日だから何かを贈りたいんだけど何を贈ったら良いかわからないと言った。正直、僕も女の物には全く興味を持ったことがなかったから一緒に行っても役には立たないかなと思ったが、一応ついていくことにした。
それから時間はたち、放課後に坂本先輩のいる教室に行き今日は一緒に帰れないことを伝える。残念がっていたが、あっちゃんにも付き合いがあるもんねと言って笑ってくれた。
「ごめんな、付き合ってもらって。うちに姉ちゃんがいるんだけどさすがに一緒に行くわけにも行かないし、好きな人がいることも言ってないしさ」
街に出て色々とみていると和也は照れくさそうに話した。
「和也、好きな人がいるって話し、私も聞いてないんだけど」
僕は笑いをこらえてそう言った。
「…あ、そうだったっけ」
和也はおとぼける様にそう言うとまた照れくさそうに笑った。
「うん、聞いてない」
僕は和也が笑うのにつられて笑い出す。
「そんなに笑うなよ」
「だってさ、凄いさらりと自分の好きな人をばらしてるんだもんよ。そりゃあ笑うさ」
僕がそう言うと和也が僕の後ろに回り軽く首を絞めてきた。
「ごめん、ごめん。もう言わないから許してくれよ」
「仕方ねえな、許してやるよ。あ、美香には言うなよ」
僕はわかったと言って和也から離れた。気がつけば、和也の前では女言葉で話すのを忘れていた。だけど、別にいいやと思えた。和也といると自然に笑えていたから。
「なぁ、これなんかどうだ?」
和也が指さしたのは熊のついたイヤホンジャックだった。
「うん、良いんじゃないか」
「よし、秋もそう言うならこれにしよう」
和也は嬉しそうにそう言うとそのイヤホンジャックを手に取りレジで会計を済ませた。
「喜んでくれると良いな」
「おう、ありがとな。付き合ってくれて。今度なんかおごるよ」
和也はそう言うと歯を見せて笑った。
「じゃあ俺、こっちだから」
街を出て道の曲がり角にさしかかり和也はそう言って帰って行った。僕も少し急いで家に帰った。家に着くと母はまだ帰っていなくてほっとした。夕飯を作り母を待つ。そのうち母が帰ってきて一緒に夕飯を食べる。
「お母さん、あのね、明日付き合ってる人を連れてきて良いかな」
食べ終わり食器を洗い終わって一息ついてから母にそう言った。
「昨日言ってた人ね。良いわよ」
母は凄く嬉しそうに優しく微笑むとそう言った。
「良かった。じゃあ明日連れてくるね」
僕も笑ってそう言って宿題があるからと部屋に行った。
ー続くー
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