だれ。

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 ***  翌週の村山教授の講義が急遽休講になったと聞いた時、俺は特に不安を抱くことはなかった。強いていうなら教授もいい年だし、あの感染症を貰ってきてしまったのだとしたら大変ではないか、と感じたくらいである。そうなった場合は一大事だろう。彼は学校に出入りしていたはずだし、教職員や事務員の間でクラスターの発生なんてことにもなりかねないからである。  だが、事実はそうではなかった。  むしろ、仮にそうであったのならどれほどマシだったことだろう。  あの授業があってから、約一か月後。布団の中で蹲って、がたがたと震えている俺がいる。外に出るのも怖い。けれど、このまま家に閉じこもっているのが本当に安全なのかもわからない。一体この世界に、自分達の身に、何が起きているのかも全く想像がつかないのだ。 「なんだよ、これ……っ」  ネットニュースに踊る、●●大学関係者、連続不審死、の文字。  最初に死んだのは、村山教授だった。翌週の講義の日にはもう、自宅でバラバラ死体になっていたらしい。通勤してこない彼を不審に思った職員が見に行ったところ、家の鍵が開いていて、部屋の中が血まみれになっていたのだそうだ。  その三日後に死んだのは、田町志穂だった。彼女は電車に轢かれて、バラバラどころか完全に肉のミンチになってしまった。おかしいのは、誰も彼女が線路に落ちるところを見ていないということ。運転手は、突然彼女が線路の上に“座った姿で出現した”と証言したのだそうだ。  それから四日後、一週間後と、立て続けに●●大学の建築科の学生が次々と死んでいく結果になったのである。全員に共通していることは、皆が最終的にバラバラ死体以上の細切れになって死ぬということ。そしてあの日の人類学の授業で、“0000”を無視して授業を進めるように進言した生徒ばかりということだ。 ――俺も、俺も死ぬのか……殺されるのか!?あんな風に、バラバラになって……!?
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加