だれ。

　せっかく大学に入ったのに、何でこんなことになっちゃったんだ。今年の一年生で、そんな不満を抱えている人間は少なくないことだろう。念願の建築科に入ることができた俺もまたそんな一人であると言っていい。原因は言うまでもなく、例の感染症だ。まさか入って早々、授業がオンライン授業ばかり、まともに実技の授業が受けられない状況になるなんて、去年の暮れまでは誰も予想していなかっただろうに。
　おかげで学校に言ってＣＡＤの授業を受けることもできないし、建築模型を作ることも叶わない。ひたすらオンライン授業とレポートの繰り返しである。一般教養科目の大半はそれである程度どうにかなるかもしれないが、実技科目と専用科目は一体これからどうやって対処していくつもりなのだろうか。ＣＡＤのソフトなんて学校のパソコンにしか入ってないし、模型を作れる環境だって学校にしかない。これでは、建築家になるという夢もどんどん遠のくばかりではないか。

――いや、わかってますよ。わかってますって。一番つらいのはお前らじゃないんだから我慢しろって言いたいんでしょ、おたくら。

　ああ、講義前にツニッターを見るのではなかった。とある大学生の愚痴が大炎上している現場を目撃してしまい、本当に嫌な気持ちになってくる。

『親の金で食わせて貰って学校行かせてもらってるやつが贅沢抜かすな！こっちは仕事なくなってもっと大変な想いしてるってのに！』

『授業なくなって困ってるのは大学生だけじゃないんだぞ！』

『そんな文句ばっかり言うなら大学なんかやめれば？』

『コロナで困ってるのが自分だけみたいな言い方やめてくれませんか。不愉快です』

『生活も成り立たなくなって役所に駆け込んでる人もいるのに、その人たちに比べたら自分は恵まれてると思わないの？』

『こんな状況で大学再開してクラスターになったら、あなた責任取れるんですか？今も一生懸命戦ってる医療従事者の皆さんやご家族に申し訳ないと少しでも思う気持ちがあるなら、そんな贅沢言えないと思うんですけど』