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「いいか、絶対に動くなよ」
こちらを睨みつけながら近づいてくる。
レジのお金を取るつもりならレジカウンター内のスペースに入った方が早いのに、なぜか普通の客側のスペースを歩いていた。
「動くなよ、動くなよ……」
獰猛な野良犬に対峙した時のように恐る恐るこちらに向けて発してくる。もちろん動くつもりはない。
慎重に移動しながらレジカウンターにやってきた元覆面男はなおもこちらを睨みつけてくる。
どうなるのかと思って見守っていると、レジに入ったお金には目もくれず処分に困っていたノートパソコンと黒衣の衣装を回収していく。
「このパソコン高かったんだよ」
ポツリと呟き店から出て行った。
結局店に来たのにただこちらが処分に困っていた物品を回収していっただけで、その他には何もせずに帰っていった。
一連の出来事が現実に起きた事なのかよくわからかったが、多分誰に話しても作り話としか受け取ってもらえないだろう。
何事もなかったことにして、中途半端になっていたフライヤーの清掃業務へと戻ることにした。
僕はいったいこんな夜中に何を見せられていたのだろうか……
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