§15

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 まだ少し足腰がふらつくけど、どうにかショーツとTシャツを身に着けてデスクに向かう。電気ポットに水をセットして、置きっぱなしだった紙袋からドリップバッグを出そうとしたところを、背後からするりと腰に腕を回された。  後藤は、下はジーンズを履いていたが上半身は裸のままだ。 「おい、よせよ」  まだ足りないのかよ、と呆れかけたときだった。 「二十五歳、おめでとうさん」  耳の後ろから思いがけない言葉を囁きかけられた。 「あ」  忘れていた。そうか、もう午前零時を回ったのか。って。 「お前、なんで知ってた?」  背後で後藤が小さく笑う気配がした。 「親父さんが言ってたろ。パスワードはお前のイニシャルと誕生日だって」  そうだった。ファイルを開いて確認するとき、こいつも一緒にいたんだっけ。 「奎吾」  僕の腰を抱き寄せているのと反対側の手も前に回された。 「……?」  上向きの掌の上に乗っていたのは。 「ハリネズミ?」  一瞬ハリーかと思ったら違った。つんと尖った鼻に、ハリーより少し生意気そうな目。手に取って確かめると、サイズも一回り大きく、眼鏡も蝶ネクタイもない。
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