§15

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 デスクの上に並ぶ二匹のハリネズミが、キーボードを叩く僕を仲良く見守っている。その僕の耳に、ヘッドホンはない。結んでいない襟足の髪を、後藤の長い指がゆっくりと撫でている。今みたいに。  半分だけの方舟は、案外乗り心地は悪くなさそうだ。仕事の効率は少し落ちるかもしれないけど。  それとも、むしろ集中力は上がるだろうか。 「なあ」  後藤の腕の中で、僕は顔を上げた。 「なんだ」 「雨、まだ降ってるかな」  後藤も顔を上げて窓の方を向く。 「ああ……もうやんだんじゃねえかな」 「じゃあ、一眠りしたらドライブにでも連れてってくれよ」 「ドライブ?」 「そう。デートしようぜ。取材じゃない、ちゃんとしたやつ」  もう一度こちらを向いた後藤の目が、軽く見開かれる。  僕はその顔に手を伸ばして、邪魔な眼鏡を奪い取った。 (了)
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