血染めの足あと

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 少年ふたりが走り去った跡を見て、少女は笑みを――笑顔という概念を顔の辺りに浮かべ、呟く。 「いいなあ、楽しそうで」  フェンスに背を向け、倉庫の前まで来る。血だまりのような足あとの上を、彼女は歩いていく。  ジャングルジムの横を通り、その裏にある、大きな木の根元へ。そっと、彼女は横たわった。 「私も、卒業したかったな」  声は悲しそうに闇に溶け、彼女の身体は足あとと共に消えた。  ――K小学校の七不思議に、『血染めの足あと』というものがある。  ある冬の日。卒業を間近に控えた女子生徒が、翌日提出する必要がある課題を学校に忘れてきてしまい、それを夜になってから思い出した。  校庭から忍び込んだ女子生徒は、不運なことに、通りがかった変質者に目をつけられてしまった。  襲われ、傷つき、血まみれになりながら逃げた木の下で、彼女は息絶えた。  犯人は、彼女の身元がわからないよう、その顔や手足を潰して逃げた。翌朝、現場となった校庭の状態は、凄惨そのものだった。  のちに犯人は捕まったが、事件以来、彼女が死んだ時間になると、血に染まった足あとが、彼女の最期の軌跡を表すように浮かぶそうだ。  そんな噂話。
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