さようなら

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「何やってんの?って、お前んとこの講堂を作ってんだろうがよ!」  おじさんはそう言うと、ゲラゲラと大きな声で笑った。体格がよく、がっしりとした肩幅。建設業にはうってつけの身体で、作業着がよく似合っていた。 「なんだ、しみったれた顔して!高校生がだらしねぇぞ!」  現場でのおじさんは威勢がよく、道具片手に声を張り上げていた。そんな大声出さなくても聞こえるよ。僕はおじさんに笑顔を作り、手を振った。おじさんもそれに応えると、笑顔で現場に戻っていった。  こういう時に、高校生活とは全く無縁の明るい人に会うと少しだけ元気が出る。しかし元気が出たのは束の間。僕は1つため息をつくと、駐輪場に置いてある自転車の鍵を開け、のろのろと自宅へ向かった。
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