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「雪だるま、作ろうよ」
ハルが景色から僕へと目を移す。僕がうなずくと、ハルはやったと呟いた。その顔はやっぱり三つも上には見えなくて、けれど僕を見ると自然伏し目がちになる表情も、学校では一緒にいられないことも、僕の知らない友だちがいることも、確実なその差を表していた。
ハルが新しい雪へと一歩ふみ出す。ぎゅ、と固められた雪がハルの足跡を作って、僕はハルが歩いてきた道と、後ろと、もう一度前を見た。
僕より大きな、ハルの足跡。
ハルの靴は田舎ではあまり見ない、シンプルで、でも洗礼されたような格好良さがあって、僕には憧れだった。
自分の足もとを見下ろして、一体どうして同じ靴ではないのだろうか、と何度も思ったことをまたくり返した。
当時僕の靴は母親が買っていて、彼女は流行りやお洒落には疎かった。もしかしたら興味がなかっただけかもしれないが、スーパーに毛が生えたような近所のショッピングモールにある靴屋が主な購入先だった。だから当然、ハルと僕の靴が同じになることはなくて、僕はそれがたまに、ほんの少し、嫌だった。
こんなところでさえ僕とハルは違う。僕とハルが一緒に歩いても、同じ足跡はできないのだ。形も歩幅も違う、てんでばらばらの跡。
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