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Side 凛太朗
「―――隼人、もう…いいから」
幸次からだいぶ離れ、僕は肩に回された隼人の腕をやんわりとはずした。
僕は隼人の僕に対する『好き』に気づいてからなるべく思わせぶりな態度はとらないようにしてきた。
昔から活発で頼りがいがあって、一見粗暴に見えるけど優しい従兄弟のお兄ちゃん。
たった数ヶ月の差だけど、隼人は僕にとってはお兄ちゃんなんだ。
だから、大好きなお兄ちゃんにこれ以上つらい想いをさせたくなかった―――のに。
僕に言われ隼人は不服そうにしながらも一応は従ってくれる。
幸次の前では対抗意識なのかぐいぐいくる感じだけど、決して無理強いはしない優しい人だ。
今日のこれだって、昨日フラれた僕を思っての隼人からの申し出だった。
僕と隼人が仲良くしてたら幸次は無駄に罪悪感を抱く事なく、いつか僕の気持ちが落ち着いたら元通り友だちに戻れるからって。
そんな優しい人を利用するみたいな事は本当はしたくない。
だけど、僕がいつまでも幸次にべたべたしてたら僕の気持ちを受け入れられない幸次は罪悪感を抱くだろうし、友だちとして――とは言ったものの今は幸次の顔を見てうまく笑える自信がない。
隼人の言う通りだったから。
―――だから…。
正直隼人の申し出は今の僕にはありがたかった。
「凛、なぁ俺たちこのまま本当に付き合わないか?俺―――」
「―――ごめん。隼人…ごめん」
隼人は従兄弟で、いつも僕に優しくしてくれた。
大好きなお兄ちゃん。誰よりも素敵で恰好いいお兄ちゃん。
――――でも、それでも僕は幸次の事が好きだから、だからごめん隼人。
隼人の気持ちに応える事はできないよ。
自分はなんて自己中なんだ。
こんな時でも目の前にいる隼人よりもさっきの別れ際の幸次の顔が思い出されて、僕の心はきゅーっと苦しくなるんだ。
頑張って早く友だちに戻るから、だからもう少しだけ待っていて。
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