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凛太朗の泣き顔なんて嫌っていうほど見てる。
だけど、昨日の凛太朗の泣き顔はそれのどれとも違っていて、涙を流す事なく泣いていて、あの時と同じであの時と違う泣き顔。
妙に大人の色香を思わせた。
俺はそこが家族が集まるリビングでなかったら、凛太朗に何をしていたのか分からない。
嫌がる凛太朗にきっとひどい事をしていたに違いなかった。
一度だけ大きく深呼吸をして凛太朗を部屋に誘った。
大丈夫。ひどい事はしない。話を訊くだけだ。
呪文のように頭の中でそう繰り返す。
「――凛、佐倉と…、何かあったのか?」
びくりと震える身体。
俺の予想は当たっていたらしい。
「―――フラ……れ、ちゃった……」
ぽつりと呟く凛太朗。
欲望にぐらりと傾きそうになるがなんとか理性で抑え込む。
そんな、まさか。
そう思いながらも俺の中で「チャンスだ」と悪魔が囁く。
「――――じゃあ、さ。俺と仲良くしてるとこ、見せたらいいよ」
「――どうして…?」
「だってさ、友だちとしてフったのフラれたのって気まずいだろう?それだったら別に仲いい人がいればそんなに気を遣わなくてもよくならないか?」
「―――でも…」
凛太朗の瞳が不安気に揺れる。
―――もうひと押しだ。
「凛太朗だってすぐに友だちとして普通に付き合えるのか?」
「―――っ」
「俺の事なら気にせずにさ、利用してくれていいし、俺の方がちょびっとだけ兄貴なんだからこんな時くらい頼ってくれていいんだぜ?」
凛太朗はまだ迷っている風だったが、最後には小さくこくりと頷いた。
ごめん。凛太朗。
俺には下心だらけなんだ。
これが凛太朗を佐倉から掠め取る最後のチャンスだと思うから。
だから、俺はお前を手に入れる為に平気で嘘をつくよ。
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